Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

あなたの人生の意味 上 (3)

今日は、先日紹介した「あなたの人生の意味」から第三章を紹介する。

第三章は「克己 ―― ドワイト・アイゼンハワー」。第34代アメリカ合衆国大統領である。ただし、この章はドワイドさんの母親のアイダ・アイゼンハワーさんの話もたくさん出てくる。著者はドワイドさんの人格形成にアイダさんが深く関わっていると考えているのだろう。

命がはかなく、人生が無慈悲なものだとすれば、それでも生き抜いていくために、どうしてもある程度以上の心の強さ、心の鍛錬が必要になる。
(p.122)

今の日本の若い人達をネットで見ていると、超絶メンタルが弱いことに驚く。心が強くないどころではなく、明確に弱い。学校教育を見ると、メンタルを強くするような教育は殆どされていないように思える。その理由はおそらく2つあって、1つはいろんな意味で戦いを避けるようになったこと。実戦であれ、言論であれ、打たれることがないと打たれ強さは生まれないのだ。もう一つは宗教。

私たちはもう、かつてあったような「罪」という概念自体を捨ててしまったらしい。昔のような「人間は生まれながらに堕落していて、邪悪だ」という考え方をまずしなくなっている。
(p.125)

この「罪」はキリスト教でいうところの原罪、sin を指すのだろう。日本にも昔は良いことをしないと天国に行けない的な考え方があったはずなのだが、今は子供にそのようなことを教えない。

宗教とはちょっと違うが、道徳や倫理も重要な指針になると思うのだが、

人生において何より重要なのは、各人が自分の行動に責任を持つこと、そして行動において道徳的に正しい選択をすることであるというのは、ずっと変わらない。
(p.127)

とはいっても、道徳的に正しいと決めてしまう発想もとても危険だ。

アイゼンハワーさんはメンタルは最強だったと思われるが、それでも冷静さを保つために、こんなことをしていた。

たとえば、自分を怒らせた、自分の気分を害した人間の名前を日記に書き連ねる、というのもその一つだ。そうすることで、相手への怒りをその中に封印しようとした。
(p.143)

のちのデスノートである【嘘】。

今日の一言は、全然一言じゃないけど、アイゼンハワーさんの回想録に出てくる話から。

「僕はきっと船みたいなものなんだと思う。いつも強い風や波にさらされて大きく傾きながら、それでも何とか沈まずに浮かんでいる。障害物も多いから、方向転換も頻繁にするし、時々は後戻りもしなくちゃならない。でも、全体としては、苦しみながら、ゆっくりでも前に、自分の思っている方向に向けて進んでいる」
(p.162)

最短距離だけが人生ではないのだ。


あなたの人生の意味 上
デイヴィッド ブルックス
David Brooks その他
夏目 大 翻訳
ハヤカワ文庫NF
ISBN: 978-4150505264