Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

狼と香辛料XIX Spring LogII

今日は「狼と香辛料XIX Spring LogII」。

4つの短編が入っています。2つ目の「狼と甘い牙」にはコルとミューリが出てきますが、他の作品はコルとミューリが旅に出た後の話です。

例によってストーリーは無視して気になった表現をいくつか。1つ目の作品「狼と花弁の香り」は、香りの強い花が出てきます。自然に大規模な花畑が出来ているようですが、

香りに引き寄せられてか、蜂もすごい。
(p.23)

TVのドラマや映画では花畑に寝転がっているシーンとかありますが、実際に自然の中で花があると、だいたい虫がいます。蜂もよくいます。寝転がったりすると危険なのです。しかし都会の花壇にはあまり蜂とかいないから不思議なんですよね。

この話では、ロレンスが村人たちが隠している石臼を探し出して没収するという、嫌われ役をやることになります。

村の災いはすべて、旅人がもたらすものさ。
(p.46)

領主が直接没収したら村民から反感を持たれて関係が悪くなるので、部外者のロレンスがやった方がいいというのです。旅の恥はかき捨て、というのは「魔女の旅々」にもネタが出てきます。恥をかき捨てるというのは、旅人にしかできない意外な役割です。

2つ目の「狼と甘い牙」は、ミューリが壊した湯舟の中島の石をコルがコツコツと修復するシーンが出てきます。

積み上げるだけでは駄目なのは、経験や人間関係と同じだ。
(p.107)

石を積み上げた後、楔形の木を打ち込んで固定しないと崩れるそうです。人間関係の場合は、まず積み上げることも難しかったりしますが。

3作目の「狼と羊の毛づくろい」は、ホロが番犬の代わりに羊の群れをコントロールしようとしますが、これがなかなかうまく行きません。苦戦しますが、ふとコツをつかみます。

長の首根っこを押さえれば、群れを制することができるのだ。
(p.154)

集団と戦うときは、指示を出しているリーダーを叩くのがセオリーですね。

4作目の「狼と香辛料の記憶」から、ホロの言葉。

歳ばかり徒に重ね、似たような景色しか見てこなかったのう
(p.211)

いろんな所を旅して見ているような気もしますが、実際は見るものが自分好みの所に偏ってしまうわけです。

今日のシメの一言はこれで。

どんなことにも慣れはくる。
(p.217)


狼と香辛料XIX Spring LogII
支倉 凍砂 著
文倉 十 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048928915