Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

優しい音楽

今日の本は瀬尾まいこさんの「優しい音楽」です。

3つの短編が入っています。そうきたか、のような意表を突く展開はなかなかのものです。

2つ目の作品「タイムラグ」は、夫婦が旅行に行く間、子供を預かることになった浮気相手の話。浮気相手に面倒を見させるという大胆な発想はなかなかのものですが、本題とは全然関係ない、この話。

話せば話すほど、だんだんつまらなくなってきた。実体験のない話は中身がない。
(p.97)

高校時代に付き合っていた本好きの男子の話が面白くないというのです。リアルはフィクションより奇なり。

3つ目の作品「がらくた効果」は、章太郎とはな子が同棲しているアパートに、はな子ががらくたを拾ってくるという話です。その拾ってきたのが、おじさん。

佐々木と申します
(p.140)

佐々木さんは大学教員をしていましたが解雇され、さらに妻から離婚を言い渡されて、財産を全部取られてしまってホームレス。公園で寝泊りしているところ、はな子との話がはずんで意気投合。

あり得ないような話ですが(笑)。ちなみに、個人的には3つの作品の中で、この作品が一番のお気に入りです。とにかく佐々木さんのズレっぷりが面白いのです。

佐々木さんは言語学が専門で、日本語は無駄に詳しいです。章太郎が年賀状を書いている時に、2文字の賀詞は目上から目下に送るときに使う、という話をします。これを聞いたはな子が章太郎に無知だといいますが、

いいえ、章太郎さんは無知ではありません。必要ではないから知らないのです。
(p.166)

本当に必要ないのか分かりませんが、私も知りませんでした。必要ではないことを知りすぎて、脳内メモリが随分無駄になっているような気がします。


優しい音楽<新装版>
瀬尾 まいこ 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575522327