Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

人生には何ひとつ無駄なものはない―幸せのための475の断章

仕事始めということもあるので、今日は昨日紹介した本から少し。「人生には何ひとつ無駄なものはない」。この本は鈴木秀子さんが、遠藤周作さんの著作の中から名言を選び出した、名言集です。

いくつか紹介してみます。

キリストの教えた本当の精神の一つは、いかなる人間も高見から他人を裁く資格はないということです。信仰者の陥りやすい過ちの一つは自分が神から選ばれた人間である故に、神を知らぬ人を密かに裁き、軽視するという気持だ。
(p.103)

最近とある質問掲示板に出ていた質問ですが「罪のない者だけが石をなげなさい」を、罪がなかったら石を投げていい、という解釈をしている人がいて少し驚きました。キリスト教的な解釈として「人は誰でも罪を持っている」という大前提があるのですが、そこがうまく伝わっていないようです。聖書には「さばいてはいけません」と書いてあるのですが、遠藤さんはここで「高見から」という言葉を加えているところが興味深いです。

日本人は古来、死にさいして見苦しくしてはならぬという信念を持ち、美しく死ぬることを願ったが、基督教のイエスは十字架で死の苦しみを赤裸々に人間に見せてくれた。
(p.150)

切腹の作法などは典型的だと思います。一休宗純が死ぬときに「死にとうない」と言ったという逸話がありますね。これは後から付け加えられた創作という説もありますが。

貧しいということはハンディキャップである。しかし、貧しかったゆえに強い意志を自分の中に作った人を私はたくさん知っている。
(p.168)

昔の日本は貧しかったのですが、若者には夢がありました。今の日本は豊かになりましたが、夢のない若者が増えたといいます。ネットでも「夢がありません」とか「やりたいことがありません」というような質問が多数見られます。

滅入ったときは、孤独になりなさい。そして孤独のときの対話は、やっぱり本や芸術です。絵をみたり、音楽を聴くのがいい。音楽は、楽天的になっているときは心にしみこまないし、絵だってわかるのは滅入っているときです。
(p.216)

落ち込んでいる時ほど感化しやすい、感性が研ぎ澄まされているので、それを活用しろというのです。また、本を読むのもいいといいます。

そういうときこそ、本屋に行ってしかるべき本を買ってくるんだ。人生論の本でも、なんでもいい。そして読めば、一語一語が身にしみてわかるはずだ。
(p.218)

心が弱っているとすぐに動かされてしまう。詐欺にあうのもそういった時でしょう。心の弱い状態を逆手に取って本を読む、というのは確かにいい考えだと思います。こんな時にネットで変なものを見て心を動かされるとどこに行ってしまうのか、それはそれで興味深い。

たくさんお金があって、何でも買えたら逆に楽しくはないと思うんですよ。
(p.264)

お金が殆どない時にちょっとだけ貯めてちょっとしたものを思い切って買う、というのは凄く楽しいものです。

ということで、名言ばかりの本から選ぶのは大変難しいのですが、今日の一言はこれを選んでおきます。

幸福というのは、与えられるものではなく、創り出すものです。
(p.75)


人生には何ひとつ無駄なものはない―幸せのための475の断章
遠藤 周作 著
鈴木 秀子 監修
海竜社
ISBN: 978-4759305401