今日の本は「誰の死体?」。推理小説です。
この本は「ようこそ実力至上主義の教室へ」で確か椎名さんが紹介していた本です。かなり本格派、というか古典的な感じの作品です。しかし読んでみて思ったのは、椎名さんよくこの本を綾小路に推薦しましたね。
とある浴室に知らない人の死体があった、という事件が発生します。明らかに殺人事件ですが、被害者が誰だか分からない。そこで名探偵のピーター卿登場、という話です。
ピーター卿と行動するスコットランドヤードの警部はパーカーとサグ。
ばかもたまには怪我の功名で真実を突くことがある。
(p.51)
これはピーター卿がサグに言った言葉。視点が賢者とは違う人も役に立つわけですね。
理論学者にとって何より致命的なのは、バーカー君、実地体験がおろそかになることですから。
(p.150)
こちらは医師のジュリアン氏の言葉です。医師が知的なのは世界共通ですが、ジュリアンの言葉はおおむね非常にロジカルです。例えば、
少なくとも、今日は見せてあげられなくても、明日には――または一年以内――または私が死ぬ前には見せられるはずです。
(p.152)
論理的に穴がないですね。1年から死ぬ前の間に何がある、というのは気になりますが。しかしピーター卿はこんなことを言います。
「人が論理的に物事を整理するのは、シャーロック・ホームズとかああいう話の中だけなんです。普通は、誰かから変わったことを聞かされても、『驚いた!』とか『かわいそうにねえ!』とか言うだけで、特に突っ込みもせず、ほとんど忘れてしまいます。
(pp.165-166)
普通の人は論理的な思考による検証をしていない、もっと感情的に判断して終わらせると。論理的に考えるのは結構しんどいですからね。適当に考えて動いた方が楽なのです。失敗しますけど。
さて、この本はミステリーなので読者は犯人を当てようとしながら読むわけですが、
たいていの人間には人殺しの動機がどっさりあるものなんですね。
(p.167)
そこがこのストーリーではいまいち見えてこない。なぜ殺されたのか分からない…って誰の死体か分からないから当たり前ではありますが。誰のものか分からない鼻眼鏡、のようなアイテムは面白いし気になります。
「僕が探偵小説で不満なのは」とピゴット氏は言った。「誰も彼も過去六ヶ月間に起きたことを一つ残らず覚えてる点なんです。
(p.209)
単に覚えているだけではなく、実際は脚色が入るものです。
誰の死体?
ドロシー・L・セイヤーズ 著
Dorothy L. Sayers 原著
浅羽 莢子 翻訳
創元推理文庫
ISBN: 978-4488183028