Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ようこそ実力至上主義の教室へ10

今日の本は「ようこそ実力至上主義の教室へ10」です。

今回は退学者を強制的に出すための試験が行われます。ルールは各クラスで賞賛すべき生徒を3人、批判すべき生徒を3人選ぶというもの。賞賛票が首位になった生徒には報償が与えられますが、最下位は退学になるという恐怖のイベントです。今回はルールが分かりやすいので読みやすい。

そうなると反感を持たれている葛城と龍園は大ピンチ、ていうか退学確定モードになるわけですが、そう簡単に話は進みません。今回の一番の見どころは、龍園を退学回避するところ。

退学候補といえば自己中の高円寺もそうですが、票を誰に入れるべきか、クラスメートに釘を刺します。

本当に必要なのは秘めた実力だよ
(p.52)

実力のある生徒を退学にするとクラスの今後のためにならないという主張、だから実力のある高円寺は退学にすべきではないというロジックです。人間がそんなに合理的に判断するのかという点については疑惑がないわけでもない。

ヒドい試験だと文句続出ですが、茶柱先生は当たり前のことを言います。

社会に出れば誰かを切り捨てなければならない事態というものは必ず訪れる。その時はトップや管理職の者がその鉄槌を下さなければならない。
(p.205)

まあそうですね。トップが責任とって退陣、というパターンもよくありますが。

今回気になったセリフとしては、龍園から伊吹へのこの言葉は面白いですね。

おまえは強いが、俺に言わせれば隙も多い。
(p.224)

確かに。達人になれば隙もないのかもしれませんが、中途半端に強い者ほど何かと隙があるものです。力で何とかなると考えてしまう、あるいは力を出すことに集中しすぎてそこが隙になる。

Aクラスの司令塔、坂柳のこの行動も実に興味深い。

神室に対して、坂柳は半分真実、そして半分嘘を教える。
(p.242)

情報を全て伝えることほどバカな話はないのです。

で、今回の一言。

目と目を見れば、信用できるかどうかはある程度判断することが可能だ。
(p.308)

これはとても危険な技です。「ある程度」といううのがポイント。素人はやめておけと忠告しておきます。


ようこそ実力至上主義の教室へ10
衣笠彰梧
トモセ シュンサク イラスト
MF文庫J
ISBN: 978-4040655062