今日の本は「豆の歴史」。原書房の「食の図書館」シリーズで、豆以外にもいろんな食べ物や酒の歴史をテーマにした巻が出ています。
豆の歴史はかなり古く、旧約聖書にも記述がありますが、基本的に貧しいという属性が付いて回るという歴史があったようです。ちなみに、ピタゴラス学派が豆を食べることを禁じていたという話が、この本には何回か出てきます。何故かと思いましたが、生のそら豆で発症する病気があるそうです。
奇妙なことに、はじめて症例が発見されたのは、ピタゴラス教団の本拠地があった現在のイタリア南部である。
(p.75)
当時の人達がそれに悩まされていたのかもしれません。
最近になって、豆の健康効果に注目されるようになってきました。特に米との組み合わせについては、
米にはリジンという必須アミノ酸が不足しているが、豆には多く含まれている。一方、豆に不足しているメチオニンという必須アミノ酸が、米には多く含まれている。
(p.76)
納豆ごはんは最強コンビのようですね。もっとも、精米すると米の栄養分はかなり減ってしまうようです。
ちなみに、豆は野菜だそうです。
米やパスタに似た使われ方をするため、でんぷん食品に間違われることが多いが、豆は野菜である[植物分類学上、豆とはマメ科に属する穀類と定義されるが、実際には未成熟状態で食べる場合(野菜)、成熟して乾燥させた状態で食べる場合(穀物)などの使い分けをするのが日本では一般的]。
(pp.65-66)
[]内は訳者による注釈です。確かにさやいんげんのような状態だと野菜感がありますね。
この本は豆そのものの歴史だけでなく、各国の豆料理の紹介、農産物としての豆の立ち位置のような話も出てきます。つまり豆知識が満載なのです。豆が出てくる話もいくつか紹介されています。
民間伝承や寓話には、人間が社会性を身に着けるうえでの必要な知恵や知識が詰まっている。
(p.84)
ということで豆が出てくる話には豆の持っている役割を象徴したような内容が含まれているわけですが、実例として、「田舎のネズミと町のネズミ」「エンドウ豆の上に寝たお姫様」「ジャックと豆の木」などが出てきます。さらに風習として、
日本には何世紀も続く「豆まき」という儀式がある。
(p.89)
という点にも触れています。調べてみると、日本の文献では室町時代に記述があるというので、600年ほど前からあるようです。
豆の歴史 (「食」の図書館)
ナタリー・レイチェル モリス 著
竹田 円 翻訳
原書房
ISBN: 978-4562058549