Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

古着屋・黒猫亭のつれづれ着物事件帖

今日の本は「古着屋・黒猫亭のつれづれ着物事件帖」。

事件帖なんて名前が付いているのでミステリーかな、と思ったら実は着物本、と言っていいほど着物ネタが満載の本です。着物知識がこの一冊でかなりレベルアップします。

主人公の波子は住んでいたアパートが火事で全焼して、会社は倒産。祖母の家が空き家になっていたのでそこに一人で住み始めたら、なぜか着物生活が始まってしまった、というシナリオです。着物を売っている黒猫亭の女主人、マリイはとてもミステリアスな感じですが、ストーリーがそれほどミステリーではありません。

とはいえ、出てくる人達が微妙にミステリアスです。例えば第四章に出てくる瀬川さん。外を全裸で歩くのが夢です。全裸で外を歩くのは違法行為だということは知っていますが、なぜ罪なのかというのを本気で悩んでいます。マリイさんによればそれは蛇のせいだといいます。蛇というのは何かの象徴とかいうのではなく、アダムとイブの話です。

老婆三人組の「三バア」もリアルで面白い。割と気楽に読める一冊です。よかった一言を紹介します。

「身ぃに不相応な贅沢はな、人を芯からダメにするん。着物についた墨汁と一緒」
(p.161)


古着屋・黒猫亭のつれづれ着物事件帖
柊 サナカ 著
宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ
ISBN: 978-4299008527