Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

天盆

今日の本は王城 夕紀さんの「天盆」。

王城さんというと個人的には「青の数学」の知的バトルの強烈な印象なのですが、この小説はファンタジー、天盆というゲームバトルです。天盆というのは要するに将棋系のゲームで、

天盆とは、この蓋の国固有の盤戯である。
(p.19)

それに使う駒は、

将、臣、白師、黒師、卜者、弓、馬、衆、麒麟、獅子、鳳凰
(p.20)

そしてもう一枚の駒「帝」を取れば勝ちです。しかし、細かいルールは一切出てきません。将棋やチェスが分かる人なら勝手に想像してだいだい当たっている、という感じでしょう。

東盆陣、南盆陣、西盆陣、北盆陣という地方戦のいずれかに優勝すると天盆陣に参加する資格を得ます。天盆陣で優勝した者は制陣者と呼ばれ、制陣者はこの国で立身する道となっているのです。

主人公は梵天。幼児の頃から天盆の才をみせ、10歳で天盆陣に出るのですが、そんな年齢で無理だろうと思わせないストーリーが何とも微妙な塩梅で面白いです。特に気に入った一言を。

天盆は、何も動かさぬ、初めに並べた形が最も強いのだ。
(p.214)

 

天盆
王城 夕紀 著
中公文庫
ISBN: 978-4122064294