Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

天冥の標IX PART2──ヒトであるヒトとないヒトと

ということで今日は天冥の標、Ⅸ。「ヒトであるヒトとないヒトと」の PART2。

前半は舌戦シーン。論説バトルです。セアキ、カドム、アクリラという主役達がエランカ率いる政府を説得するシーンや、カドムが《救世群》相手に冥王班が治るという切り札を使って味方に引き入れるシーンなど。駆け引きの会話が面白いです。しかし実際に現場でこんなにうまく行くことは稀じゃないでしょうか。

その中で言葉では解決しないのが《海の一統》。

アクリラはショッカー…じゃなくてカルミアンに改造されてモンスター化しているのですが、それを知らないで支配権を乗っ取ろうと企んだのがスリーピーヘッド。名前からして賢くなさそうですが。

口先ばかりの艦長なんかに用はありませんや。話をするのは勝った人間だ。あんたの父親が領主に勝たせてやったときみたいにな。
(p.122)

大見得を切って武力行使で勝つ予定なのに、相手が最強なので逆に爽快にコテンパンにやられます(笑)。絶対強者のアクリラの落ち着きぶりが面白いです。

アクリラはその後スリーピーヘッドを航海長に指名します。それなりに力はあるし、支持基盤もあるので、追放しないで重用した方が役に立つわけです。実力主義者というのは、強い奴の下に付き、弱い奴は叩く、というポリシーを持っているので扱いやすいということもありますかね。

PART2の後半は《咀嚼者》の本拠地フォートピークに突入作戦。バトルシーンです。潜入しているイサリと合流してミヒルを倒して制圧するというミッションです。突入するときのセリフ。

「少なくともリスクに見合ったリターンはありそうですがね。そのリスクのど真ん中にひっぱりこまれるとは思いませんでしたよ」
(p.343)

対策を考えるときは、常に最悪を想定すべきなのです。想定リスク通りなら、想定を超えた雨が降ってアタフタするどこかの国よりはマシなようですね。


天冥の標IX PART2──ヒトであるヒトとないヒトと
小川 一水 著
ハヤカワ文庫
ISBN: 978-4150312312