Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

いいからしばらく黙ってろ!

今日は竹宮ゆゆこさんの「いいからしばらく黙ってろ!」。

主人公は龍岡富士。富士さん。女性です。卒業式で袴姿のまま、バーバリアン・スキル(バリスキ)という劇団の「見上げてごらん」という演劇を見に行って、開演10分後に非常事態が発生して避難して、観客のゴタゴタしている状況を何故か関係者でもないのに収拾した後、成り行きで劇団に入ることを決意してしまうのです。本人いわく、

やばい状況であればあるほどその渦中に飛び込んでみたくなる性質
(p.274)

とのことです。やばい状況を引き寄せているような気もしますが、劇団に関しては最初からヤバすぎる状況なので如何ともし難い。

劇団メンバーは、南野、蟹江、樋尾、蘭さん。もちろん協調性は超絶皆無です。

こんなにもまとまりのない連中が、今までどうやって劇団としてやってこられたのだろう。
(p.169)

勝手な先入観としては、劇団というのはそういうもののような気もしますが。

この中で唯一マトモなのが樋尾で、他の3人は個性がありすぎるので説明するのも面倒…あ、大也を忘れていた。大也というのは存在感が皆無で、いても気が付かないタイプの人です。さよなら絶望先生に出てくる臼井影郎みたいな感じでしょうか。一応紹介しておくと南野は野蛮人、蟹江は脚本家、樋尾はマネージャ、蘭さんがヒロインって感じですかね。

ストーリー全般に出てくるのが、富士が今までの生活で身に付けたノウハウを応用するシーンです。例えば南野が喋りまくって誰も止められないときに、

下の双子がうるさくてたまらないとき、よく講じた手段だった。するめを与える。せんべいを与える。ジャーキーを与える。フランスパンでももちろんいい。硬い食べ物を与えて、とにかく口に喋る暇を与えない。
(p.96)

という技を使って黙らせるのです。そういえばカニ鍋を食べると皆さん静かになるという伝説もありますが、やはり人生経験というのは重要なのです。

滅茶苦茶で絶望的な状況で何とか開演にこぎつけた舞台は大事件の連発で無茶苦茶を超えたカオスになりますが、こういうのがリアルであるのなら見てみたいものです。


いいからしばらく黙ってろ!
竹宮 ゆゆこ 著
KADOKAWA
ISBN: 978-4041089118