Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

桃太郎は盗人なのか?―「桃太郎」から考える鬼の正体

桃太郎というと、日本人なら誰でも知っている正義の味方です。個人的には般若の面を被って悪人の前に現れるイメージですが、それはさておき、この本は福沢諭吉芥川龍之介池澤夏樹高畑勲の4人が「桃太郎が悪い」と指摘していることから疑問を持ち、事実はどうなのかを小学生が検証していった、という内容です。

この本は、倉持よつばさんが、第22回「図書館を使った調べる学習コンクール」(主催:公益財団法人図書館振興財団袖ヶ浦市図書館を使った調べる学習コンクール」推薦作品)の《調べる学習部門》小学生の部(高学年)で「文部科学大臣賞」を受賞した作品を書籍にまとめ直したものです。
(p.142)

この本の視点は、桃太郎は善人か悪人か、というところに置かれています。個人的には、何で桃なのかというのが気になるのですが、それに関しては調べていないようです。ただ、初期の桃太郎は桃から生まれたのではなく、川から流れてきた桃を食べた老夫婦が若返って子供を産んだ、という話は紹介されています。

桃が不老不死の薬、のような話は中国ではあったような気もしますが、とにかく、なぜ梅でもキウイでもなく桃なのか、ということには触れていません。

蛇足すると、もう一つ個人的に気になっているのは、水カンの歌ではありませんが、なぜ桃太郎と犬、猿、雉という弱小・少人数パーティで鬼ヶ島という多数の強敵がいるホームに乗り込んで勝てたのか、ということです。実は大群で攻め込んだのか、あるいは最強の兵器を持っていたのか、実は鬼が数名しかいなかったのか、そういう所は謎のままのようです。

話を戻すと、この本では、

江戸時代から1892(明治25)年頃までは、桃太郎は宝ものを取りに行くために鬼が島に行った。つまり桃太郎は盗人であると言える。
(p.82)

と結論付けています。

何故桃太郎がわざわざ鬼から宝を盗もうと考えたのか。そして、もし桃太郎が盗人なら、唱歌の歌詞にあるように、桃太郎が宝を奪うことが絶賛されているのはなぜか。そこまでは考察は踏み込んでいません。このあたりは小学生には難しいことなのでしょう。世の中には裏があるし、裏にはさらに裏があるものなのです。


桃太郎は盗人なのか?―「桃太郎」から考える鬼の正体
倉持 よつば 著
新日本出版社
ISBN: 978-4406063890