Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

遺伝と環境の心理学―人間行動遺伝学入門

今日は専門書で「遺伝と環境の心理学」です。

Amazon で中古本に凄い値段が付いていますが、このような学術書こそ Kindle 版で販売して欲しいものです。

遺伝といえば、親から子に性質を受け継がせるメカニズムと思いがちですが、

遺伝子のレベルにおいて、父親も母親も子どもとは半分は類似しているが半分は類似しておらず、遺伝子の「型」のレベルで親と子どもとは基本的には同一にならない
(p.100)

ということから、

遺伝とは親子を類似させるメカニズムではなく、むしろ全く反対に親子を類似させなくさせるメカニズムであると見なすことができる。
(p.100)

とのこと。そう言われてみれば、確かにそうですね。とはいっても、半分似ているというのはかなり似ているような気もします。親子は顔が似ているものですが、父母から半分ずつ受け継いだら、父にも似て母にも似るわけです。

ネットでよく見るのが偏差値が遺伝する的な話ですが、偏差値というのはともかく頭の良さは遺伝するのか、するとしたら頭の良さを決めるような遺伝子があるのとかいうネタ。

遺伝子の働きについてよくある誤解の一つに、OGOD(オー、ゴッド)がある。One Gene, One Disease(一つの遺伝子に一つの疾患)の頭文字を取ったもので、遺伝子と疾患(あるいは一般にある表現型)が「一対一」に対応していると考える誤解
(p.118)

最近の説では、遺伝といっても単独の遺伝子によって伝わるとは限らず、複数の遺伝子が影響し、さらに環境によって左右される、ということのようですが、もうそこまでいくと遺伝って感じではなく、何か別のモノのような気がしてきます。


遺伝と環境の心理学―人間行動遺伝学入門 (心理学の世界―専門編)
安藤 寿康 著
培風館
ISBN: 978-4563058975