Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

西遊記 上―完訳

今日は「西遊記」を読んでいました。

この小説は「孫悟空」として有名です。アニメにもドラマにもなっていますが、日本語で完訳を読んだ人は少ないのではないかと思います。日本で原文を読んだ人はもっと少ないと思われますが、私は読んでいません。

この長編小説の全体像は、

一、孫悟空が天界で大暴れ。
二、玄奘法師の身の上ばなし。
三、唐の名臣が夢に龍の首を斬る。
四、西域の冒険旅行。
(pp.3-4)

と紹介されています。

三の話を少し紹介しますと、龍王が天上界の玉帝に雨を降らせるように命じられるのですが、命令に背いたため死刑にされてしまいます。龍を斬るのは魏徴という役人です。龍に命乞いをされた太宗は、処刑当日、魏徴を碁に誘って処刑場に行けないようにします。碁の相手をした魏徴は結局処刑場に行かないのですが、途中でうたたねをします。

「わたくし、いましがた、夢で龍を斬りました」
(p.124)

夢の中で斬ったのに現実世界(?)の龍が斬られてしまうのが驚きです。太宗は龍王の約束を守れなかったことを悲しみますが、同時に魏徴がどんなことがあってもなすべきことを守る人物であることを知り喜ぶのです。

斬られた龍にしてみると、自業自得ではあるが話が違う。太宗は龍の呪いで死んでしまいます。しかし、地獄からこの世に帰ってくることができます。帰路は来たときと別の道を通ります。

あの世ではもとの道をあとがえりは厳禁である。かえるにはひととおり地獄めぐりをしなければならなかった
(p.129)

恐山のようですね。帰る途中で出会った餓鬼に、この世に帰ったら施餓鬼の法要をすると約束したので、この世に戻ってから約束の法要を行うのですが、その大法要を行うのが玄奘法師です。このときに太宗が法師に三蔵という雅号を与えることになります。

 

西遊記 上―完訳
現代教養文庫 921
呉 承恩 著
村上 知行 翻訳
ISBN: 978-4390109215