今日は辻村深月さんの「ぼくのメジャースプーン」。ジャンルはミステリーなんですかね。最後のアッと言わせるクライマックス、この展開は全然気づきませんでした。
おもな登場人物は、主人公のぼく。とある能力を持っています。そして、幼なじみのふみちゃん。ちょっと面白い感性の女の子です。
「じゃ、パンに入れるそれも、あんまり入れると食べた時おなかがパンパンになるのかな」
(p.24)
それというのはベーキングパウダーか、イースト菌か、どっちかちょっとよく分からないですけど、いずれにせよパンパンにはなりません。
ふみちゃんは本をただ何となく読むんじゃなくて、そこでの知識を現実と結びつけて自分のものにする
(p.26)
これはちょっと驚きましたね。それ以外の本の読み方があったのかと。何となく読むというのがよく分かりません。
人間って、絶対他人のために泣いたりできないんだって。誰かが死んで、それで悲しくなって泣いてても、それは結局、その人がいなくなっちゃった自分のことがかわいそうで泣いてるんだって。
(p.82)
心理学的にはそうでしょうね。人間は自分の世界の中でしか生きられない。
ストーリーですが、小学校で飼っているウサギが惨殺されます。その時の第一発見者がふみちゃんで、おかしくなってしまう。そこで「ぼく」は能力を使った復讐を企みます。
能力について説明役になるのが「先生」です。どんな能力かというと、条件ゲーム提示能力というのですが、
Aという条件をクリアできなければ、Bという結果が起こる
(p.168)
話の中では「呪い」という表現も出てきます。この呪文を唱えられた人は、
Bという結果への恐れと怯えから、必死になってAの条件をクリアしようとする
(p.168)
呪いというのは普通、もっと単純な願いとか祈りのようなもので、例えば「死ね」とか、そのようなシンプルなものだと思うのですが、この能力は前提条件と結果を相手が選択できるというのがミソです。先生もこの能力を持っているのですが、結構怖い使い方をします。考え方もクールです。ボクが言おうとしている呪いは正しいのかという質問に対して、こんなことを言います。
正しいと思えば全て正しいし、間違っているというなら、初めから全てが間違っています
(p.273)
そのような能力自体が間違っているというのですね。でも使っちゃう。前提からしておかしいというのは、こんな言葉も。
ライオンが先か卵が先か
(p.302)
質問が間違っているという話なのです。
ぼくのメジャースプーン
辻村 深月 著
講談社文庫
ISBN: 978-4062763301