Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

凶器は壊れた黒の叫び

今日は階段島シリーズから第4弾、「凶器は壊れた黒の叫び」。

例によって基本、ストーリーは端折って気になった台詞とかだけ。まず、安達と七草の会話の中で、七草がこのようなことを考えます。

嫌いな理由ならいくつでも並べられるけど、好きな理由を言葉になんかしたくない。
(p.122)

こんなことを口に出したら大変なことになるわけで、考えるだけで口には出しませんが、好きな理由を並べるのは、Re:ゼロから始める異世界生活の「ゼロから」でレムが並べまくるシーンがいいなぁ。

今回は、魔女のルールが出てきます。

初め、魔女は魔法を遣えない。別の魔女から奪い取る必要がある。上手く奪い取れたなら、魔女はふたつの魔法を遣えるようになる。ひとつ目は、自分の世界を創る魔法。ふたつ目は、自分の世界になんでも奪ってくる魔法。
(p.128)

あややこしいこと。個人的には魔法少女転じて魔女になる、のようなシンプルなのがいいですね。

今回も七草はタクシーに乗ります。ただし今回は忘却探偵のようなことは言いません。運転手に何か話とかないかと尋ねると、タクシー運転手が述懐してくれます。とある女性がお金がないのでテレホンカードで乗れないかと言ってきた。もちろん乗車拒否したのですが、それを今では後悔しているというのです。

あの方にはそうしなければならない事情があったのです。お金を持っていなくても、あの寒い夜にタクシーを停めてどこかに向かわなければならない理由があったのです。
(p.139)

考えすぎのような気もしますが、そこまでイメージした上でなお、拒絶しなければならないことも、実世界ではよくあるのです。だったら、知らない方が楽ではありますが。

今回のトクメ先生は、七草にこんなことを言います。

貴方が大切なものを壊したくなるなら、それはエネルギーですよ。
(p.172)

これは面白い。ダークマター的なエネルギーっぽいですけど、まあそれは気にしないと。

最後に、七草の思想的なところを一つ。

より良い答えを得るためには、対立する意見はぶつかり合うべきだ。ぶつかって生まれる問題よりも、無理にぶつからないように縛りつけて生まれる問題の方が危険だ。
(p.194)

ぶつかって何かが生まれるところじゃなくて、別の問題を避けるため、という逃避的な発想が七草らしいです。


凶器は壊れた黒の叫び
河野 裕 著
新潮文庫nex
ISBN: 978-4101800806