Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

その白さえ嘘だとしても

今日は昨日紹介した小説の続編、「その白さえ嘘だとしても」。階段島シリーズの第二弾です。登場人物は継承しています。メインは七草と真辺。今回はクリスマスパーティ直前のアタフタが舞台です。

今回もストーリーに関係ないネタを拾って紹介してみます。まず、うえお軒という屋台のラーメン屋の主人の乃木畑さん。この人、

オレだって元は超絶プログラマー
(p.70)

超絶プログラムを書く人のことですね。分かります。階段島は捨てられた人格が暮らしているというシナリオなのですが、ということはリアルの世界ではどういう人間が残っているのか気になりますな。

「どうして超絶プログラマーがラーメン屋やってるんですか」
「美味いラーメンを作るプログラムを書いてたら、こっちに夢中になったんだよ」
「なんですか美味いラーメンのプログラムって」
「現実で起こることはなんでもプログラムに置き換えられるの。
(p.70)

美味いプログラムができるとは限りませんけどね。

委員長の水谷さんと七草の会話。

「真辺さんには、少し問題があると思うんです」
「少しどころじゃない。たくさん問題があると、僕は思うけどね。委員長はどの問題のことを言っているの?」
「主に人間関係の。なんていうか、ちょっと身勝手ですよね」
「とても身勝手だよ。
(p.76)

自分勝手というか、他人を人間と意識していないような気がしますね。

この水谷さん、小学生の時も優等生で、一所懸命お掃除をして、教室をピッカピカにしたそうで、先生に褒められたのですが、掃除をした後の教室を汚した生徒に先生が怒るシーン。

「綺麗に掃除してくれた水谷さんが悲しむと思わないの?」
(p.169)

そう聞いた水谷さんは驚きます。

先生は、廊下を綺麗にするために、私が掃除をしたと思ってるんだ。
(p.170)

水谷は先生に褒めてもらうために掃除をしていたのであって、廊下はどうでもよかったのです。

知恵袋でも、勉強しても親が褒めてくれないのでやる気をなくす、的な質問がよくあります。確かに小学生だとそのような動機で勉強してもおかしくはないのですが、大学を受験する歳にもなってそれはちょっと…。


その白さえ嘘だとしても
新潮文庫nex
河野 裕 著
越島 はぐ イラスト
ISBN: 978-4101800349