今日は鈴木英治さんの「闇の剣」。時代物です。
主人公は勘兵衛。剣の腕は悪くはないのですが、真剣勝負になると身が竦んで手が出ないタイプ。それがいきなり闇夜に闇討ちです。一撃はかわしたものの、次の一撃が防げません。が、
地面に叩きつけられて燃えはじめていた提灯を踏みつけた足がずると滑った。
(p.18)
これで尻餅をついたので避けた。しかしこれで絶体絶命で後がありません。ここに誰か酔っ払いが通りかかって、襲った奴が逃げてしまう。何かこういう逃げ方が何度かあります。運が強いのか。
このストーリーで強い味方になるのが、十手持ちの七十郎。
稲葉七十郎は、南町奉行所定町廻同心である。
(p.32)
十手持ちです。この二人の会話。
「まさか、その何者かというのは?」
「そう、闇風かもしれぬ」
(p.34)
この闇風というのが今回の敵。凄腕で正体不明なのですが、何故か襲った人の首を持ち去るのです。理由は分かりません。最後に分かるのですが、この時点では謎です。
勘兵衛には蔵之介という子供の頃からの友達がいます。蔵之介は凄腕なのですが、何と急死してしまいます。さらに、勘兵衛にヘンな噂が流れます。
「旗本家の落胤?」
(p.156)
勘兵衛が先代、元隆公の落胤だというのです。その噂は一体どこから来たのか、勘兵衛が調べるうちに、話がどんどんややこしい方向に行ってしまいます。果たして闇風の話はどこに行ったのか(笑)。最後の闇風との対決で、勝負を左右することになる理由がなかなか面白いです。
闇の剣
鈴木 英治 著
ハルキ文庫
ISBN: 978-4894569645