Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

グレースと公爵

今日はグレース・エリオットさんの「グレースと公爵」。

この本は、オルレアン公の元愛人だったグレース・エリオットという実在した人物による手記である。

一月二十一日月曜日の朝、わたしは陛下を救うためパリ市民が大挙して立ち上がったという知らせがいまにも届かないかと待っていた。やがて十時ちょうどに大砲の音が聞こえた。陛下のために民衆が叛乱を起こしたのだとわたしは思った。だがなんと、それはかの貴いおかたの首が落ちたその瞬間だったのだ。
(pp.112-113)

フランス革命の時代、ルイ16世が処刑された1793年の描写である。この後、マリー・アントワネットが処刑され、グレース・エリオットは逮捕されて監獄に入れられてしまうが、

十八カ月間さまざまな場所に幽閉されたのち、エリオット夫人はついに釈放された。彼女は監獄では一日に四回、四スーの燻製のニシンを食べ、一びんの水であらゆる用を足して生き抜いた。
(p.183)

手記が書かれたのはその後かなり経ってからで、記憶違いの箇所もあるというが、実際に体験した人による記録はリアルなのである。

 

グレースと公爵
グレース・エリオット 著
野崎 歓 翻訳
集英社文庫
ISBN: 978-4087604290