Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

れんげ荘

今日の本は群ようこさんの「れんげ荘」。そういえば煉瓦荘って歌あったな、こちらは太田裕美さん。

ざっと読んだだけなので、れんげ荘の所在地がよく分からかなった。但し都内のはず。物件情報は、

ふるーい昔のアパートだからねえ。夏は涼しいかもしれないけど、すきま風は吹くしトイレとシャワー室は共同だね。六畳で押入は一間ついてる。台所は半畳だな。
(p.19)

これで家賃は月3万。窓を開けようとしたらうまく開かない。

すっと開かないほうが、防犯上いいんだよ。夜寝ていても、がたがたやってりゃ、目が覚めるしさ
(p.22)

その発想はなかった!

主人公はキョウコさん。すきじゃぁぁ、じゃないけど、れんげ荘自体は何だか「めぞん一刻」に雰囲気が似ているのだ。ヘンな住民がいるところとか。キョウコさんの性格はマジメ人間ということになっている。

「会社にいるときもまじめに仕事をやって、それがいやになって、無職になったときもまじめに無職をやろうとする」
(p.126)

キョウコさんは大手広告代理店に勤めるバリバリのサラリーウーマンで、給料もよかった。しかし不毛な仕事内容と実の母親の精神攻撃に耐えきれずに崩壊、45歳で自主退職して実家から脱出してれんげ荘に至るのである。引越すときに、自分の持ち物を整理したら、

どこにこれだけの物が入っていたのか。おまけにそのほとんどは使われていないものだった。
(p.41)

まあそういうものでしょう。私のカバンの中には大して使わないものがわんさかあったから、一度リストラしたんだけど、まだ重いので何か持ち運びを止めたい。といいつつなかなか置いて外出できない。という割に大事なものを忘れて外出したりするのである。

退職したのは衝動的ではなく、ちゃんと貯金して将来設計もした上でのことだ。

ひと月十万円の生活費を貯金から下ろして使う。予算さえ守ればいちおう八十歳までは生活できるはず
(p.29)

家持ちだと、メンテ系でいろいろ出費があるものだが、アパート暮らしだとソレを心配しなくていいので安上がりになる。怖いのは病気や事故だと思う。無職で国民健康保険っていくらなんだろう、と思って調べてみたら年間2万円程度らしい。国民年金は毎月16,410円らしいが、キョウコさんは貯金の切り崩しで80歳まで生活する気なので、そんなの払うつもりはないのかな。年金は、昔は25年払うと受給資格がgetできた。今は10年で資格getなので、キョウコさんは既に受給年齢に達したら年金をもらう資格があるんじゃないのか。多分、毎年40万程度もらえそうだ。

でもヒドい部屋にはいろいろ困るのだ。日当たりが悪いから夏は涼しいのだが、こんなことを悟れるらしい。

地球の暑い地域の人々が、日中、だらーんとしていて、体力を温存しているのがとてもよくわかった。怠けているのではなく、働かないほうが体のためにいいのだ。
(p.150)

涼しくても蚊が出たりするから居心地は悪そうだ。それに比べ、冬は死にそうな寒さというからただ事ではない。寒い冬に比べると夏の方が過ごしやすいのだろう。

という劣悪環境の中、なにもしない生活が始まる。なにもしないというか、「なにもしない」をする生活みたいな感じもするけど、それは望んだ生活なのか、というのが微妙に気になるところ。キョウコさんの兄にはレイナという娘がいる。そのレイナに、大人になると楽しいのかと問われて、

辛くて嫌なことも多いけど、楽しいこともあるわよ。それは自分で自分を楽しませることを見つければいいんじゃないのかな。
(p.252)

確かに、楽しいとか面白いというのは自分の気持ち次第なわけだな。

同じアパートの登場人物が、一刻館とか、さくら荘の住民のあの感じと同じで、異常に個性的なところが面白い。


れんげ荘
群 ようこ 著
ハルキ文庫
ISBN: 978-4758435574