Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール―光と闇の世界

今日紹介するのはは、2005年3月8日から5月29日まで、国立西洋美術館で開催されていた、ラ・トゥール展の解説本。

多数のカラーページとコラムから構成されている。絵の紹介は、解説と全体の写真だけでなく、部分的なアップ写真も出ていて、細かいところを確認できるのが面白い。有名な絵としては、「虱をとる女」(pp.64-67)、ダイヤのエースを持ついかさま師(pp.72-79)、など。p.82 から始まっている「書物のあるマグダラのマリア」の解説では、蝋燭の光の下で髑髏と向き合っている構図が、さながらヘビメタの音楽のようである。

真作一覧のページには44点の真作のミニ画像が掲載されている。

ラ・トゥールといえば、今では有名画家のひとりだが、

1915年まで、ラ・トゥールの存在が世に知られていなかったとは、今日の我々にはほとんど想像することができない。
(p.15)

1600年代といえば江戸幕府が出来た頃、当時活躍したラ・トゥールは一度世界から忘れ去られて、今から約100年前に再発見されたのである。

大野芳材さんによる「ロレーヌのラ・トォール――画家を育んだ世界」では、当時のロレーヌの歴史を紹介していて、続くディミトリ・サルモンさんによる「ジョルジュ・ド・ラトゥール: その生涯の略伝」は、1593年の洗礼を受けたところから、1652年のジョルジュの死、その後1692年の、ジョルジュの次男であるエティエンヌの死までか略伝記の形式でまとめられている。例えば 1642年、

彼の家畜に対して請求された税金の支払いを断固として拒否する。
(p.145)

みたいな話が出てくる。この話、この後にもっと詳しい様子が書かれているのだが、長くなるので引用しない。ラ・トゥールさん、結構ガンコな感じがする。年譜にはペストとか天然痘という言葉も出てくるし、新型肺炎どころの騒ぎではない。


ジョルジュ・ド・ラ・トゥール―光と闇の世界
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
高橋 明也
読売新聞東京本社文化事業部 発行
ISBN: 978-4906536320