Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

贋作師

今日の本は、篠田節子さんの「贋作師」。ミステリーです。殺人事件です。

主人公の栗本成美は修復家。絵を修復するのが仕事です。成美は日本洋画家界の大御所、高岡荘三郎画伯が亡くなった後、その作品の修復を依頼されます。保管状態が杜撰でかなり劣化しているのです。その高岡画伯が生前に成美に修復を指名していたために成美に仕事がやってくるのですが、指名される理由が分からないし、その絵がどうも怪しい。絵を相続した大沢芳子と心理的駆け引き満載の会話をしつつ、ストーリーが進んでいきます。

このストーリーの中で気になるのは同業者の滝沢才一。男なんですが、

「あたしは嫌だわ。なんだか爬虫類っぽくって、彼は生理的に嫌。抱かれたくないわね。それにしても、四十も年下の女性を妻にするっていうのは抵抗感があるわ」
「あんたよりは、正常だと思うけど」
(p.88)

最初に言ってるのが才一、後のツッコミは成美です。まあオカマさんですね。昨日、半沢直樹で黒崎のセリフを散々読んでいたので違和感はありませんでしたけど。

キーになる人物は阿佐村慧。成美の同級生でしたが、どうしてもオリジナリティを掴めないというところが成美と似た者同士というシナリオです。模写は完璧に仕上げる力があるわけです。この慧の変態プレイが凄いんですが、まあ大変です。

最後のシーンは大クライマックスという感じで、映画にすると盛り上がりそうな気がします。火炎ビンの作り方を知ってるなんて、只者ではないですね。


贋作師
講談社文庫
篠田 節子 著
ISBN: 978-4062631440