Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

半沢直樹 2 オレたち花のバブル組

今日は半沢直樹2、東京中央銀行の営業第二部次長に昇進した半沢ですが、銀行が200億円の融資をした伊勢島ホテルが

実は、運用失敗で百二十億円の損失が出ることが確定的となった
(p.9)

ので後始末をしろというストーリーです。いったいどうすれば120億円も溶けるのか。やりかたはたくさんありそうですが。

金融庁がこれを嗅ぎつけていて、対応を誤ると大損失になって、半沢どころか上司の首が飛ぶレベルの問題になってしまうのですが、

オレは、基本は性善説だ。だが、やられたら、倍返し――
(p.326)

銀行内の敵にもしっかり借りを返して、国税局のオネエ言葉の黒崎もうまいことやっつけてしまうわけです。この黒崎、おそらく悪役なんですが、なかなか面白いキャラだと思います。

もう一つ今回並行して進んでいくのが、半沢の同期の近藤が出向しているタミヤ電機です。業績不振なのを裏帳簿で騙すようなヤバい会社なのですが、それを銀行サイドも知っているのに結託しておかしなことをしています。それに近藤が気付く。慌てたのが銀行の上司で、

このことを穏便に済ませてくれるのなら、私からおふたりの人事について大和田常務に口をきいてもいい。なんとか君らに対する人事案を撤回するように説得する。(p.331)

おふたりというのは半沢と近藤、黙ってくれたら左遷は撤回、悪いようにはしないという話を出してきます。近藤は、

いまさらタミヤ電機に居残れといわれても、もう人間関係の修復は難しい
(p.332)

という理由で拒絶しますが、これを半沢は後で、

だけど、本当に欲しいチャンスは掴めよ
(p.332)

と念押ししています。キレイ事だけでは勝ち組には残れないという現実的な要素が半沢直樹シリーズの醍醐味ですね。近藤は結局、黙ってくれたら昇進させるという取引に乗っかりますが、それを半沢に黙っていられない人の良さがあります。

オレはそのために、お前らを裏切った。次は広報部だといわれても全然嬉しくなかった
(p.362)

しかし半沢は近藤に対してキモチが分かるという。

お前は銀行員として当然の選択をしたにすぎない。人間ってのは生きていかなきゃいけない。だが、そのためには金も夢も必要だ。それを手に入れようとするのは当然のことだと思う。
(p.362)

ま、半沢も前作で正義よりも昇進的な判断をしてますからね。ふざけるなと言える立場ではない。むしろお前が言うなといわれそうな立場なんですが、近藤から見るといい奴にしか見えないわけです。裏があるストーリーというのは面白いものです。

 

半沢直樹 2 オレたち花のバブル組
池井戸 潤 著
講談社文庫
ISBN: 978-4065178188