Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

人類最強のときめき

今日は「人類最強のときめき」。この本には、中編が3つと、失敗シリーズが3作入っています。割と薄い本です。Kindle だと気付かないかな。ちょっと値段が安いところで気付く?

まず、「人類最強のときめき」は、何がときめきなのか未だに分かっていません。

ちょっとときめいちまった
(p.19)

という表現があるのでコレか、という感じはしますが、二葉を見てときめくというのが謎。エネルギー保存というキーワードも出てくるのですが、この島、猛烈な勢いで植物が育つというシナリオになっています。どこからそんなエネルギーが出てくるのかも謎。潤は食料を探していたはずなのですが、そんなエネルギッシュな植物なら食えばいいに、なにくわぬ顔をして、食わない。

この調子で植物が育ち続ければ、遠からず島は海に沈むことになるだろう
(p.30)

ということはつまり、植物の重量成分は空気中の二酸化炭素を固定したことになるのかな。そんなスゴい植物があれば、CO2排出量問題は瞬時に解決しますね。

2つ目の作品は「人類最強のよろめき」。よろめきって、何か昼ドラのイメージなんですけど、昼ドラって今もやってるのかな。読み始めたら止められなくて飲食を忘れて死んでしまう本と戦うストーリーです。戦っていたっけ。

この本を開発した、ドクター・コーヒーテーブルは、

事実は小説より奇なりって言いますけれど、本当に事実が小説より奇だったことって、ありますか?
(p.83)

あるねぇ。本には書けないことってあるから。表現の不自由展なんかに展示できるレベルのものなんか、大したことはない。

で、短編はまず「Miss/ion 3. 死ぬほど幸せ」。飛び降り自殺の動機が分からないので、調べてくれ。他殺じゃないのか、というようなネタです。人生には死にたくなるような瞬間がよくあるよね、という話も出てきて、

人生ってのは、その『死にたくなるような瞬間』を如何にやり過ごすかというのがテーマみたいなところがあるからな
(p.113)

根性しかないですかね。してみると、鈍感というのは才能のような気もします。

次の短編「Miss/ion 4. デジタル探偵との知恵比べ」より、この科白。

まあ電子書籍が発展しない理由は、もうちょっと別なんだけどなー
(p.139)

高すぎるし、読みたいときに読めないというのはどうしようもないですね、バッテリー斬り~。ってギター侍って今何やってます?

最後は「Miss/ion 5. 不敗のギャンブラーと失敗の請負人」。運がいいギャンブラーとの勝負です。相手は流れを読む能力、つまり、次にどの目が出るからを予測する能力があります。そこは科学じゃなくて「運」の一言で片づけているのですが、運って何だよ。

あたしだって、勝つときには勝つ理由があるし、負けるときには負ける理由があるぜ。勝つはずだったのに負けた、負けるはずなのに勝った、なんてことは一度もねーよ」
(p.158)

確かに。ていうか、勝ったときに負ける理由を分析するとか、負けたときに勝てる要素を調べ上げるような人はあまりいませんよね。勝った時は勝因だけに注目する。だから勝って当たり前のような錯覚をしがちですが、実際は偶然勝っただけで、負けてもおかしくないことだってありそうな気がします。thin ice の上に立っていても、割れて落ちなければ気付かない。


人類最強のときめき
西尾 維新 著
竹 著
講談社ノベルス
ISBN: 978-4062990936