今日は西尾維新さんの「人類最強の初恋」です。ご存知ない方はタイトルが分かりにくいと思いますが、人類最強というのは哀川潤というヒロインのこと。最強の初恋というわけではなく、人類最強(の哀川潤)の初恋、ということなんですね。多分。
ストーリー的に哀川と呼ぶと敵とみなされるらしいので、今後、潤と表記することにします。この本には「人類最強の初恋」と「人類最強の失恋」という2作品が入っています。
「初恋」の方は、潤がスカイツリーで寝ていると隕石が直撃した、という物騒な話。最強なので隕石程度では死にません。この隕石が実はただの隕石ではなく宇宙人だった、というストーリーです。自分で書いていて何のことやら全然想像できないですね。すみません。
で、潤が人類最高の知能を持つおじいちゃん、ヒューレット准教授に、あたしハブられていじめられていると相談しますと、
「いじめられる方が悪い」
(p.119)
私もよく「いじめられる側に原因がある」ということがありますが、このおじいちゃんは「悪い」と言い切りましたね。
お前は自分がいじめられている理由を、自分が強いからだと思っているかもしれないが――お前が皆から無視されているのは、お前の性格が悪いからだ。
(p.120)
これは実に言い得て妙なんですよね。その通りなのだから。例えば潤が「もっと嫌われろ」とアドバイスするシーンがあります。
いい思いしている癖に、その上人から好かれようってのも、結構無茶苦茶だと思わない?
(p.103)
潤が話をしている相手は長瀞とろみ。とろい名前ですがなかなかのキレ者です。潤と違ってキレたりはしませんが。どちらかというと、トロトロとじっくり煮込んだビーフシュー的なキャラです。とろみという名前にしては鋭いことも言います、例えば、
結局人間関係なんて――コミュニケーションなんて、第一印象がすべてみたいなところがあるじゃないですか
(p.140)
確かに。そういえば、例の事件のとばっちりでテレビに滅多に出てこなくなった、みのもんたさん。私、昔はどちらかというとキライだったのですが、例の女子アナ万個事件【謎】でイノベーションというか、逆に劇的なファンになったのです。
プロクルステスの寝台って知ってました?
定義に合わせて現実のほうを捻じ曲げちまうことをプロクルステスの寝台っつー
(p.65)
Wikipedia を見ると、
プロクルーステース(古希: Προκρούστης, Procrūstēs)は、ギリシア神話に出てくるアッティカの強盗である。
とか書いてありました。書けない言葉も簡単に使えるのがネットの怖いところですね。右から左に情報を流しているだけ。私もインターネットの構成部品だと自覚できるのがいい感じです。何か老後の必要経費を2000万円に合わせろという話を思い出しましたが、それはおいといて、この話はやはりヒューレットパッカード博士【違】の言うことが面白い。
大抵の生物は『ただなんとなく』行動している
(p.122)
これ、最近特によく思います。具体的にいえば、この書評だって、ただなんとなく書いているだけです。思考している気がまるでしません。指が勝手に書いているみたいなものですね。もしかして指が考えていますか。ユビーに寄生されている的な?
准教授はその理由も説明していますが、そっちはショボいので省略します。
2つ目の話「人類最強の失恋」は、潤が月に島流しになります。島じゃないな。月流し。宇宙に追放するというのは魔法科高校の劣等生でも出てきたネタですが、最強人類は宇宙に追放する位しか対応のしようがないようです。潤いわく、
あたしはだだっぴろい空間に一人でいるより、狭いところで誰かとぎゅうぎゅうに詰まってるほうがよっぽど快適だねぇ。
(p.173)
二人いたら、強いとマウント取れますからね。とろみは「寂しがりなんですね」とかズレた反応していますが。そういえば、とろみの質問。
不思議なもので、才能のある人ほど『努力が大事』と言うんですよね。あれ、なんでなんでしょう。
(p.215)
素晴らしい質問かもしれないけど、それよりココ、「なんでなんで」という表現がなかなか印象的でよかった。でも潤の返事が、
才能がある人が才能が大事だっていったら、ただの自慢になるから、謙虚な姿勢を示してるってことじゃねーの?
(pp.216-217)
なるほどねぇ…。
最後に、「初恋」なんですが、この話、宇宙人が魅了という能力を使って人類を操ってしまうのではないかというピンチを何とかしろ、という話なんですけど、潤はそんなの心配する必要ないのでは、といいます。
人間って結局、好きなものでも、守りたいものでも、欲しいものでも、ぶっ壊せるしぶっ殺せる生き物だからさ。
(p.138)
魅了されても殺してしまえばいいのだと。もしかして、AIも進化すると、最終的にはそうなるんですかね。