Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ハプスブルク家の悲劇

今日の本は「ハプスブルク家の悲劇」です。

ハプスブルク家オーストリア、ヨーロッパの中心に位置していて、あらゆる方向から攻撃されるのでもう大変なわけです。この本は、次の事件を紹介しています。

エリザベート暗殺事件
・ルードヴィヒ二世変死事件
・マイヤリンク事件
・ヨハン大公失踪事件
・マクシミリアン帝処刑事件
サラエボ事件
モーツァルト変死事件

この中で有名なのは、世界史の教科書に必ず出てくるサラエボ事件と、映画のネタにもなったモーツァルト変死事件でしょうか。サラエボ事件は、暗殺されたフランツ・フェルディナントとゾフィーの二人がウィーンでは人気がなかったといいます。

だからウィーンっ子たちは、当初暗殺事件にびっくりはしたものの、帝位が人気者のカール大公に移ったことを喜んだほどで、あまり同情の声も起らなかった。
(p.244)

そんな話は教科書には出ていなかったですよね。でもここから第一次世界大戦が始まってしまうわけです。

ルードウィヒ二世変死事件は、パラノイアになったと診断されて王位を剥奪された二世が、医師と一緒に水死体で発見されるという事件。事件自体がミステリーですが、二世が狂気だったという点について、後の研究によれば、この時の診断がデッチアゲだという説があるようです。例えば、

「狂気の証拠とされている事柄は、今日なら変人と言われるていどのもので、ルードヴィヒ二世がたまたま国王だったために、作為的に強調されて示されたにすぎない」
(pp.78-79)

フォローになっていないような気もしますが…

又従妹にあたるエリザベートに至っては、

国王は狂人ではないわ。ただ、夢の世界に閉じこもって風変りな暮らしをしていただけ。」
(p.97)

やはりフォローになっていないような…。慣習通りに桜を見ただけで大騒ぎになる国もあるのに、そんな国王がいたら国が潰れてしまいます。


ハプスブルク家の悲劇
桐生 操 著
ワニ文庫
ISBN: 978-4584391099