Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

怒れ、孫六-はぐれ長屋の用心棒(34)

今日は、はぐれ長屋のシリーズから「怒れ、孫六」です。34作目です。今回は、女の子誘拐系のパターンです。

今回の美少女はお菊。祖父の島吉は孫六の知り合いで、孫六はお菊が赤ん坊の時に見たことがあって、情も移ります。この島吉は現われたらすぐに、後を頼むとかいって死んでしまう。

島吉は2両しか持って来なかったので用心棒たちも困るのですが、娘を攫われたという大金持ちがちゃんとやってきます。依頼金は百両。これで長屋の面々が本気になります。現金なものです。

ところで、少女を誘拐するということは、やはり遊郭が怪しい。ということでそういう場所を探索することになりますが、当時の江戸の様子が、

深川には、深川七場所と呼ばれる遊里で知れた地が七箇所もあった。時代によって、多少場所はちがったが、仲町、新地、三櫓、古石場、新石場、常磐町、佃新地の七場所である。
(p.138)

てな感じだったようです。そういう所に監禁できるというのは、敵はかなりの大物なのです。油断していたらお菊まで攫われてしまったので、町方の村上どのと協力して、敵の本拠地を叩いて取り戻す作戦に出ることになります。

今回のラスボスは戸張。人さらいの集団が戸張以外全員捕まってしまったのに、トンズラしない。源九郎がなぜ逃げなかったかと訊くと、

「おれは、逃げるのが嫌いだ。それに、どこにいても同じだからな」
(p.272)

ジタバタするのは性に合わないようですね。腕はというと、

戸張は、太刀筋を読ませるような構えや体の動きを見せなかったのだ。
(p.273)

源九郎と互角のようです。達人の勝負は一瞬の差で決まります。

ところで、源九郎は、いつも菅井が起こしに来るということで、つまり朝寝坊なのですが、当時は一体何時に起きるのが普通だったのでしょう。朝のバラエティとかありませんしね。

「旦那、いま何時だと思ってるんです。もう、五ツ(午前八時)ごろですぜ。朝めしなんぞ、一刻(二時間)も前に食ってまさァ」
(p.159)

こう言っているのは孫六。旦那というのは源九郎のことです。つまり、孫六は午前6時に朝飯を食っていることになります。チコちゃんでやっていましたが、朝起きてすぐに食事をとるようになったのは江戸時代からだそうです。

 

怒れ、孫六-はぐれ長屋の用心棒(34)
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575667356