昨日に続いて「男子御三家」。第2章は「開成 運動会で結束を強めるエリートたち」。
開成高校は東大合格者数ナンバーワンで有名です。そのスーパー進学校が実は併願校になっているという驚きの事実があります。
開成を第一志望校にして晴れて入学してきた生徒の割合は、麻布や武蔵に比べるとやや低い傾向にある。
(p.139)
御三家で偏差値トップの学校が第一志望じゃないというのはどういうことか。
両校を「併願」する受験生が数多くいる
(p.139)
この併願校というのが通称「筑駒」、筑波大学付属駒場です。開成は東大合格者数はトップですが、東大合格率は筑駒に負けているのです。上には上がいるというわけですが、まだその上には理三合格率トップの灘という化物のような学校もありますね。
第一志望校を筑駒、第二志望校を開成とする受験生が相当数いるのだ。
(p.140)
この本には筑駒に落ちた人の話も紹介されています。
一二歳の当時、もう本当にショックで、生れて初めてミスしたな、なんて思いこむくらい失意のどん底にいました。
(p.140)
初めてというのが何というか…開成が滑り止めというのは想像できない世界かもしれません。とはいえ、入ったら「さあ頑張って勉強しよう」となりそうなものですが、その開成に入学した生徒は、まずショックを受けるそうです。
それまで自分の武器となっていた『勉強面での優秀さ』というものが完全に無効になってしまう
(p.105)
オレはできると思って入学したら、周囲がみんなデキる奴なんですね。ということは、
開成では「勉強ができる」「東大に合格できる学力を備えること」は学内のヒエラルキーにおけるアドバンテージには一切ならない。
(p.106)
東大に合格するのが普通なのです。だから他に優位性を求めるしかありません。とはいっても、もちろん勉強しないわけではなく、開成には「百傑」という言葉があります。
高一から『実テ』(実力テスト)が学校で始まります。この成績をもとに開成では『百傑』(上位一〇〇名)とか『裏百』(下位一〇〇名)と伝統的に呼ばれるランク付けが始まります。
(p.146)
ランキングが好きなのは単なる国民性でしょうか。中高の偏差値教育がランキング大好き人間を量産しているような気がしないでもないですが。
さて、開成の歴史は、
開成の前身となる「共立(きょうりゅう)学校」は一八七一年(明治四年)に幕末の進歩的な知識人であった佐野鼎によって創立された。
(p.111)
しかし、この佐野さんがコレラにかかって死んでしまい、共立学校がピンチになります。
これを打開したのが初代校長に就任した高橋是清である。
(p.113)
このときに掲げたのが受験予備校です。この当時から既にトップ進学校だったわけです。
ところで、開成といえば勉学というイメージだと思いますが、実は運動会がヘビーなのだそうです。
開成の子たちは学内、とりわけ運動会などの行事を通じて『ミニ社会』を経験しているのでしょう。
(p.122)
一体どういう競技があるのかというと、これは有名だと思いますが、
クライマックスはやはり高校二年生、三年生による「棒倒し」である。
(p.128)
学園都市の運動会でも結構盛り上がってましたね、棒倒し。東大合格者数ナンバーワンに、体育祭が何か関係しているのでしょうか。
『お前たちはエリートだ。エリートは体が資本だ』
(p.129)
それで運動会なんだそうです。無理やり納得することにします。
もちろん文化祭にも力を入れています。そういえば、最近とある所で、進学校ほど部活と勉強を両立するものなのか、という質問があって、勉強しないような学校はそもそも両立できないだろ的な回答がついて、そりゃそうだと思ったのですが、開成の文化祭は開成祭といいます。
開成祭の凄いのは、お金の管理、資材の管理、人数の割き方、タイムスケジュール……。その何一つとして先生たちは関わっていないところです。
(p.136)
それってすごいのかな…とちょっと思いましたが、いや、何でもありません。
(つづく)
男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実
矢野 耕平 著
文春新書
ISBN: 978-4166611393