今日紹介する本は「男子御三家」。御三家というといろんな御三家がありますが、今回の御三家は、
東京にある私立男子校「麻布」「開成」「武蔵」の三校
(p.8)
のことです。
ちなみに女子御三家は「桜蔭」「女子学院」「雙葉」です。いずれも、御三家は難関大学に多数の合格者を出している進学校として有名なのですが、さぞかし凄い進路指導をしているのだろうと思う人もいるでしょう。ところが、卒業生にどのように進学指導されたか尋ねると、
「特に進学指導らしい指導は受けていない」という。
(p.14)
(笑)
どんな指導なのかはこの本を見てください。超絶脱力すること請け合いです。
各校のカラーを喩える話があって、
もし複雑なプラモデルを組み立てるのであれば?
麻布生……組立説明書は無視、感覚だけで独創的かつ味のある逸品を制作する。
開成生……組立説明書を一言一句しっかり読み込み、精巧で完璧な作品を制作する。
武蔵生……組立の途中で各パーツにのめりこんでしまい、なかなか作品が完成しない。
(p.21)
これではわけがわかりません。本の表紙には「鬼才、秀才、そして変人…」と書いてありますが、鬼才とは麻布、秀才とは開成、変人とは武蔵を指しているそうです。いい意味で。
第1章は「麻布 プライドを持って自由を謳歌する」。
麻布の特徴は「自由」です。
麻布は細かい校則とか生徒手帳とか、それこそ制服すらありません。
(p.69)
校則がないというのですが、暗黙のルールというのがあって、
「賭け麻雀の禁止」「鉄下駄での登校禁止」「全裸での外出禁止」「授業中の出前禁止」
(p.72)
鉄下駄は華麗にスルーするとして、授業中でなければ出前をとってもいいのか、という件はこの後、放課後にラーメンの出前を取って事務の人に超怒られたという逸話が出てきます。
今度出前とるときは事務室に届けさせないで、直接教室に届けるように
(p.72)
事務の人の仕事を増やしてはいけませんよね。卒業アルバムは服装自由ということで、
なぜか全裸になって写っている子がざっと数えただけで一〇名ほどいる
(p.26)
まじすか。そんな麻布中学に入る理由は何なのかというと、
小学生のときに麻布の文化祭に来たら、もう女子校生の数が半端なくて。おぉ、こんな俺でもこの学校に入ったらモテるかもしれないぞ。
(p.14)
そんなきっかけなんですね。東京で中学受験をする小学6年生が行く塾は元日から授業をやっている位ですから、もちろん簡単に入れる学校ではないです。麻布の校長、平秀明先生によれば、
「麻布の入試問題は、知識の多寡を問うというよりは、中高時代にぐんぐんと伸びていきそうか、そんな可能性を持った子を発掘したいという意識で作成しているんです」
(p.58)
とのこと。
麻布の創設者は江原素六さんです。
江原素六は、一八四二年(天保十三年)、幕臣荏原源吾の長男として江戸で生まれた。
(p.63)
いろいろ苦難を乗り越えているうちに板垣退助と出会い、同行するようになり、その後麻布鳥居坂にあった東洋英和学校の幹事となります。これが麻布中学・高校の前身となります。
麻布生を分類すると、3種類になるそうです。
部活に励んでいる人、勉強に打ち込んでいる人、文実や運実に取り込んでいる人。
(p.74)
文実というのは文化祭実行委員のことですね。東大合格ランキング常連高というと、勉強ばかりしているイメージがあるかもしれませんが、現実は違うようです。先程も出てきた平先生によれば、麻布中に入学してきた子には、勉強のことは言わないといいます。じゃあ何を言うのか。
早寝、早起き、朝ごはん
(p.84)
朝ごはんは重要ですね。
ちなみに、塾にはどの程度の生徒が行ってるのか。高一で6~7割、高二、高三で9割だとか。残りの1割は何だろう。
『塾通いしているヤツをバカにするためには、俺は塾には絶対に行かず大学受験するからな』
(p.85)
みたいな人らしい。よく分からん動機ですが、この人の成績が高二の終わりで300人中280番だった、というのがかなり意表を突いてますよね。しかもこの人は口先だけではなくて、三年生で猛勉強して東大に現役合格したというからわけがわかりません。
何か長くなったので、久々ですが、ここで一旦区切ります。
(つづく)
男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実
矢野 耕平 著
文春新書
ISBN: 978-4166611393