Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

宇宙島へ行く少年

今日はアーサー・C・クラークさんの「宇宙島へ行く少年」。Islands in the Skyです。(※)

主人公はロイ・マルカム。16歳。優勝したら地球のどこにでも行けるというクイズ番組で優勝します。どこに行きたいかを選ぶときに言ったのが、

「低位ステーションに行きたいんです」
(p.10)

これは比較的低い軌道を周回している宇宙ステーションのこと。法的には地球の一部となっているとゴネて、事実上の宇宙旅行に行くことになります。年代設定はいつでしょうね、途中、2054年に制定された法律の話が出てくるので、その後であることは分かりますが。どこかに出ているかもしれません。

ステーションに着いたロイの面倒を見るのは、ドイル司令。ロイはドイル司令が椅子から出てきたところを見て驚きます。

なぜならデスクの上に出たとき、ドイル司令には脚がないことがわかったのだ。
(p.38)

両足がないなんて地球上では大変なハンデですが、ステーションは無重力なので足がなくても関係ないのです。ドイル司令は、水星を探検していたときの事故で両足を失ったのですが、その様子が後半に出てきます。

大きな白いものが、岩をしきりに引っ掻いていた。初めて見たときは、幽霊のようで、ぎょっとしたことを白状してもいいだろう。
(p.149)

水星に生物がいる、というシナリオは面白いですね。それも微生物のようなレベルではなく、巨大な生物です。水星は常に同じ面を太陽に向けているので、太陽を向いている面は灼熱、その逆の面は凍り付いた世界ですが、その境目に生物がいるという設定なのです。両足はこの生物にやられたわけです。

この小説が書かれたのは 1952年。今ではリアルに宇宙ステーションで宇宙飛行士が生活していますが、当時はまだガガーリンが宇宙飛行をする1961年よりも9年も前ですから、宇宙ステーション内の様子は全て空想です。それが実にリアルで、今の時代に読んでもそんなに違和感がないというのが面白いです。

 

宇宙島へ行く少年
アーサー・C. クラーク 著
山高 昭 翻訳
ハヤカワ文庫SF
ISBN: 978-4150106829

※ 文庫本表紙には ISLAND IN THE SKY と書いてあるが、書名は amazon 等で入手できる洋書の名称 Islands in the Sky とした。