Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

俺たちの仇討-はぐれ長屋の用心棒(42)

今日の長屋シリーズは「俺たちの仇討」。今回のゲストは戸坂と彩乃。このシリーズ、武士と娘の組み合わせが多いですね。

彩乃の父親の敵討ちに武士が助太刀という仇討ちパターンです。この戸坂は源九郎の昔馴染、

「わしは、戸坂だ。戸坂市三郎だよ、士学館でいっしょだった」
(p.22)

源九郎が用心棒をやっているというのを聞いて訪ねる途中だったのですが、そこで敵に待ち伏せされてピンチ、というところに源九郎が駆け付けたわけです。この戸坂が、変な剣を遣います。

わしが工夫したものでな、酔剣と呼んでいる。
(p.37)

ジャッキーチェン!

ではなくて、剣の奥義でいうところの遠山の目付です。一点集中ではなく全体を見て並行処理する技です。

さて、今回も敵が大勢いるので、一人ずつ片付ける策に出ますが、まず狙ったのか伊東。

「伊藤を捕らえるなら、早い方がいいな。どうだ、明日にも伊東の屋敷近くに張り込んで、姿を見せたら押さえないか」
(p.82)

拉致が板についてきたというか、テロ集団的になってきましたね。サクっと拉致って、次に拉致したのは平松。この平松、半ば騙されて相手の仲間になっているので、

「おぬしも、倉森たちといっしょにここに押し込み、戸坂たちを襲い、長屋の女子供まで斬り殺すつもりでいたのだな」
p.115

とか、挑発するようなことを言うと、迷いが生じます。ジジイと小娘が相手なのに何で大勢で急襲するのだ、とか問い詰められると答えられない、ていうか何で最初から気付かないですかね。

それでも敵は長屋を大勢で急襲します。これを用心棒達は何とか撃退しますが、すると敵さんは長屋の子供を人質にとって、長屋から出て行かないと子供を殺すと脅しをかけます。汚いですね。 敵は勝本源八郎という旗本の屋敷にいて、ここに子供が監禁されていることが分かる。 そこで、用心棒は子供が監禁されている旗本屋敷に忍び込み、人質を取り戻します。

しかし、このままでは倉森を片付ける算段がつかない。相手が出てくるのを待っている暇はないだろうということで、安田が名案を思い好きます。

「倉森たちと同じ手を使ったら、どうだ」
(p.189)

どんな手かというと、

「房吉と同じように、人質をとるのだ」

旗本の勝元を人質にとってしまえというのです。そうすれば、倉森も隠れているわけにはいかないだろう。勝元の動線は調査してあるので、出かけるときを狙えば拉致できるというのです。

やはりテロリストのレベル高くなっています。

ラストバトルは4対4のガチ勝負。倉森の相手は敵討ちにきている彩乃とジジイ。ジジイが酔剣で攻めている間に彩乃が後ろから突き刺すという、とても武士とは思えない戦い方ですが、ジジイと小娘だから仕方ない。もともと父親が大勢に殺されているから卑怯とか言われる筋合いはない。ジジイと倉森が一合した後、二人は後ろに飛びます。二の太刀を避けたいからです。しかし後ろに飛べばそこに小娘が懐剣を持って立っているわけです。ウマい作戦だ。

さて、最後は道場主の牧沢と菅井だけ残ったのですが、勝負するのか?

「いや、わしらは牧沢どのを斬る気はない。戸坂どのと綾乃が、敵の倉森と伊達を討ち取ったので、できればこのまま長屋にもどりたいのだ」
(p.265)

無駄な争いをしたくないというより、道場主を斬ったりしたら弟子の敵討ちがイヤという話です。牧沢もバカ強いのを3人も相手にしたくないので、

「おれも、おぬしたちには何の恨みもない」
(p.265)

とかいって、何もなかったことにしようという手打ちになって一件落着です。命がかかっていますからね、クールです。


俺たちの仇討-はぐれ長屋の用心棒(42)
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575668780