Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

磯次の改心-はぐれ長屋の用心棒(32)

今日も「はぐれ長屋の用心棒」シリーズから、「磯次の改心」です。「改心」といえば、思い出すのはO.ヘンリーさんの「よみがえった改心」(A Retrieved Reformation)ですね。赤塚不二夫さんがおそ松くんでパロディを描いています。本作はそんなに大それた改心ではないです。

先にネタバレしておきますが、磯次というのは長屋の住人「おきく」が襲われていたときに助けてやったということで長屋に住むことになった男です。しかしこれが実はヤラセで、磯次はスパイなのでした。

まず、長屋の住人、弥助が殺されます。

「す、簀巻きになって、堅川で揚がったんでさァ」
(p.27)

簀巻きというのは巻きずしみたいな感じですね。ヤクザの殺し方です。次に、春日屋という店の主人がやってきます。

「一昨日、娘が連れて行かれました」
(p.48)

連れていかれたのは、おすみ。借金のカタです。借金といっても、一度返した三十両をもう一度払えみたいな言い掛かりみたいな話なので、突っぱねたところ、強制的に連れていかれたわけです。

連れて行ったのは権蔵親分。貸元で賭場を開いている悪者なので、とても手が出せない。そこで長屋の用心棒に助けてくれたら二十両と話を持ち掛けた。長屋とやくざが結託したらボロ儲けできそうだが…

次は

「殺られやした! 岡っ引きの、佐吉が」
(p.75)

どうも後手後手に回っている。調べを進めていると、妙なことに気付きます。

「相撲の五兵衛とそっくりだ!」
(p.112)

以前退治した奴と手口が似ているのですね。しかし五兵衛は死罪になっています。生き返ったのか?

それにしても次から次へ先回りされるので、妙だと思った源九郎は、囮を使って誰か跡を尾けるのを見つけて尾行する、という作戦に出ます。すると、ひっかかったのは、

「あいつ、磯次だぞ」
(p.215)

もう200ページまで行ってますからね。そんなに気付かないものなのかな。そういえばこのシリーズ、源九郎とか割と尾行に気付かないことが多いです。老眼なのでしょうか。で、磯次ですが、おきくに惚れてしまって完全に源九郎側に寝返ってしまう。改心なんてキレイな話じゃない(笑)。とにかく磯次がベラベラ喋ってくれたので、一味をお縄にして御用だ、という結末です。

今回のラスボスは清水。例によって源九郎が誰何します。

清水、おぬしほどの腕がありながら、なにゆえ、金ずくで人を斬るようになった
(p.275)

清水はこう言います。

御家人の冷や飯食いでは、剣など身につけても食っていけんからな。……おぬしらも、似たようなものではないか。金ずくで、おれたちを斬ろうとしているのだからな
(p.275)

ですよね。


磯次の改心-はぐれ長屋の用心棒(32)
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575666991