Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

天使になりたかった少女

ジュニア小説です。主人公は15歳の少女、マーシーマーシーは拒食症です。なぜ食べないかというと、天使だから食べなくても大丈夫だと思っているのです。治療センターに入りますが、中にいる人達がまた凄いのです。マーシーは自分が病気だとは思っていないので、他の人達が辛そうだと言うのですが、

「自分で解決できないのなら、それは本人の責任よ」
(p.88)

こう言ったのはスージーQと呼ばれている少女。結構キツい一言ですが、スージーQは話の途中で倒れてしまいます。かなり痩せている感じですね。こんなことも言います。

トワイライトゾーン』にこんな話があったでしょ。ブスっていわれている女の子に美容整形の手術をして、ほかのみんなと同じにしようとするの。でも、けっきょく、実はほかのみんながすごいブスで、その女の子がきれいだってことがわかる。あたしたちは、その女の子なのよ」
(p.92)

自分を中心に物事を考えるというのは誰にでもあることですが、どちらが正しいか本当に分からないことも世の中にはありますからね。最近のミスコンは体重制限があったのでしたっけ。痩せすぎているとアウトとか。

回想的に出てくるドティおばあちゃんのこの言葉も深いです。

人間って、飢えているときや、生きるために戦っているとき、とんでもないことをしでかす
(p.115)

おばあちゃんは戦争中にナチス強制収容所に入れれらていたという経歴があるのです。

マントラを唱えるレニー叔母さんというのも面白い。

「オム・タラ・トゥ・タレ・ウゥレ・ソハー。〝この世の叫びに耳をかたむける存在〟といわれる、タラ菩薩にささげるお経なの」
(p130)

多羅菩薩ですが、 Wikipedia には「観音菩薩が「自分がいくら修行しても、衆生は苦しみから逃れられない」と悲しんで流した二粒の涙から生まれた」と書いてあります。白ターラ様と緑ターラ様がいらっしゃるそうです。私は最近なぜか地蔵菩薩様にお祈りしているのですが。

マーシーは第4章で記憶喪失になってしまいます。気が付いたら知らないところにいて、ここはどこ、私は誰…という状態なのですが、そこで出合ったカールにこんなことを言われます。

「たぶん、きみはめまいのかわりに記憶喪失になったんだよ――ほら、こんな世の中だもの――だからきみも悪化したほうがいい。もっと忘れっぽくなれ。覚えていようとしちゃだめだ」
(p.162)

世の中には忘れたいことが山盛りなんですよね。カールも結構面白いキャラですが、こんなこともしています。

「俺はレッド・ツェッペリンに関するプロジェクトに取り組んでいるんだ。人生における疑問はすべて、レッド・ツェッペリンの歌のなかに答えがあるって信念のもとにね。」
(p.179)

ツェッペリンには女性メンバーがいなかったので、かなり制限されるような気がしますけどね。


天使になりたかった少女
キム アンティオー 著
Kim Antieau 原著
田栗 美奈子 翻訳
主婦の友社
ISBN: 978-4072516249