Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ランキングのカラクリ

そういえば、今月はなぜ毎日一冊ずつ紹介しているのでしょうね? 先月は毎日紹介するという目標を立てたのですが、今月は別に「雑記」でも構わないのですが。3週間続けたら習慣になってしまうというアレでしょうか。

惰性的に今日も紹介します。今日は長屋シリーズではなく「ランキングのカラクリ」。統計的なトリックについて解説している本です。いろんなランキングが紹介されていますが、中でも、

本書で挙げた例だとたえば、「大学ランキング」なるものは悪質なものが目立つ。
(p.9)

というのは実感としてありますね。そもそも大学の「総合的評価」というのが訳が分からないです。総合的にこっちの大学が上って何、みたいな。

大学ランキングの評価に使う指標の中に「図書館充実度」というのがありますが、

ただし「図書館充実度」の注にあるように、単なる冊数を競っても意味は少ない。
(p.169)

どんな本があるのか分からないから、とのことですが、同感ですね。ただ、それ以外の要素として、快適さなどが重要という主張のようですが、個人的には Wi-Fi やコンセントが使えるとか、書庫にある本の引き出しやすさ、みたいなのも評価して欲しいです。最近だと書籍が電子化されているかというのも重要だと思います。電子化されていないと同時に読める人数がどうしても制限されてしまうからです。なかなか返さない人っていますよね。私のことか。

就職に関する評価では、

(2-1)は「就職者数÷(卒業者数 - 大学院進学者数)×100」という数値を使うそうであるが、一般には「卒業生の中の就職希望者のうち何%が就職したのか」という数字の方がポピュラーである。
(p.172)

(2-1) というのは気にしないでください。就職希望者という概念は正確に把握し辛いような気がします。就職したいけど、希望のところは無理そうだからしない、というのは希望者なのかそうでないのか、というような問題が発生するからです。また、実就職率というのは、一般に、就職率(就職者数 ÷ 卒業者数)で比較すると大学院に進学する学生が多い大学の就職率が低くなってしまう傾向があるため使われるようになったと思われます。東大だと就職率0%の学科が結構ありますよね。全員大学院に進むとそのような数字になります。

就職率に関しては、こんな話も出てくるのですが、

「2017年における、私立大学の就職率は97%でした」、この記事を見たとき、筆者は「えっ」と思った。一応中堅の大学の中で、ウチの大学は就職率の良い大学として知られていたが、それでも96%程度だったからである。
(p.75)

個人的には、97%も96%も変わらんような気もしますが。

ちなみに、こんな話も。

使っている税金の額で言えば、国立大は学生1人あたり約220万円、私立大は約15万円
(p.174)

平均の数字が出てきたときは注意が必要、ということはこの本の最初に注意喚起されているので問題ないでしょう。もちろん学生1人に対して220万円が使われるわけではありません。

面白いと思ったエピソードは、偏差値操作【違】の話。

模擬試験の日、筆者は同クラスの皆に父が経営する大学(大阪商業大学)を第2志望か第3志望に書くよう呼びかけてみた。おもしろがったクラスの半数ほどが実際に書いてくれたのであるが、この他愛ないイタズラによって恐ろしいことが起こった。なんと大坂商業大学の偏差値(難易度)が10ポイント以上上昇したのだ(恐るべしN高校生!)。
(pp.46-47)

そういえば、デジタルハリウッド大学は、国立一本で東大勝負のような人が私立は受けないのですが、空欄にするのもアレなので名前が印象的なこの大学をとりあえず書いてしまって、結果的に偏差値が上がることがあるそうですが…

ちなみに、私の高校は、ラジオのリクエスト番組に組織票を送って、校歌をランキング1位にしたことがあります。

ところで、GIGOという言葉はご存知でしたか?

アメリカに〝GIGO〟という略語があり、これは〝Garbage In, Garbage Out(ゴミが中に入ると、ゴミが出てくる)〟の略であるが、ゴミのような元データを入力すれば、出てくる結果は(どんなに情報機器が進歩しても)ゴミでしかあり得ないことを表す。
(p.67)

この解説はトンカツ弁当の話のところに出てくるのですが、とんかつ弁当はいいですよね【なにが】。

 

ランキングのカラク
谷岡 一郎 著
自由国民社
ISBN: 978-4426125356