Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

孫六の宝―はぐれ長屋の用心棒

今日も鳥羽亮さんの「はぐれ長屋の用心棒」シリーズから紹介します。「孫六の空」、何冊目でしょうかね、初期のはずですが、調べるのがだんだん面倒になってきました。

今回はタイトルにも出てくる孫六の娘が懐妊するところから話が始まります。孫六にとっては初孫。ところが、娘婿が辻斬りに切られて、その後もしつこく狙われる。ところが何でそんなに狙われるのかワケが分からない。はぐれ長屋の用心棒たちは、犯人は最近世間を騒がせている辻斬りと関係があるのではと目を付けます。そこで孫六も活躍します。

「なあに、こうみえてもな、番場町の親分と言われた御用聞きだ。」
(p.182)

つまり、孫六は元は十手持ちなのです。聞き込みや尾行はプロの技を持っています。しかし年には勝てません、みたいな。

ところが、身内の護衛では金にならない。そこで、同じ相手にたかられていそうな金持ちの岩右衛門に声をかけて、厄介な敵を片付けてやろうと持ち掛けます。助けてくれと言われて、

「承知しました。これからは大船に乗ったつもりで、わしらに任せてくだされ。ですが、ただというわけにはいきませんよ」
(p.167)

岩右衛門も驚きますが、十両といわれてホッとします。まあその十両がタカリ尽くされて既にないという悲惨な状況なのですが、何とか五両かき集めて残りは後日という話をする。華町も、

無理なようでしたら、残りは十日でも二十日でも、都合のついたときで結構ですよ
(p.169)

まあどうでもいいですが、岩右衛門、オレオレ詐欺にひっかかりやすいタイプのような気がしますね。はぐれ長屋の用心棒というのもヤクザみたいな仕事だし。まあそのチョイ悪なところが魅力なのかもしれません。

この巻は、敵の武士たちが少し哀れな感じがしました。相手の安井半兵衛は、華町源九郎の昔の道場仲間。

「久し振りに籠手斬り半兵衛と、立ち合ってみたくなってな」
(p.286)

最後は安井の道場で真剣勝負、尋常な立ち合いになります。武士が悪者の手先になって人を斬るのはどうよ、というのは正論ですが、そうでもしないと生きて行けないという現実もあるわけです。

 

孫六の宝―はぐれ長屋の用心棒
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575662962