Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

紳士たちの遊戯

何とか読み終えました。疲れました。読んだのは「紳士たちの遊戯」、ジョアン・ハリスさんのミステリーです。

どう疲れたかなんですが、まずこの作品、最初の400ページ位がなかなか辛いです。遅々として進まないというか、凄く盛り上がるようなシーンがない。そこそこスリリングなシーンは出てきますが、それが学校のドロドロした描写で、いじめとか出てくるので、読めば読むほど気分が落ち込んでいく感じです。そして、章が切り替わるところで時代が前後するから何がどうなっているのか理解するのにちょっと苦労しました。

舞台はセント=オズワルド校、という学校。男子校。主人公ではないと思うのですが、最初から最後まで出てくるラテン語の教師、ロイ・ストレートリーがなかなか個性的で、今の日本の学校にはいる気が微塵もしないような古風な先生です。私が高校生の頃はこういう先生わんさかいました。例えばこんなことを言うのです。

教師である以上、いちばん重要なのは、ほんとうに怒りを感じたときに怒りを隠し、怒っていないときに怒っているふりをすることだ。
(p.575)

怒っていいのかという意見もありそうだが、怒る先生はいつも怒っていたような気がする。絶対に怒らない先生もいました。

ストレートリーに挑戦的なのは、もちろん犯人。ミステリーですからね、犯人がいて人が死にます。全体はときどき語り手が変わって視点も変わるような構成なので、章が変わるところでちょっと頭が付いていけず、クラクラすることもあります。

次のセリフは犯人がセント=オズワルド校の連中が分かっていないと非難するところなのですが、

世の中の規則や法律はみな、こけおどしと自己満足という当てにならない構造で支えられている、ということを。どんな犯罪ともおなじように、不法侵入も誰にも目撃されなければ罰せられない、ということを。
(pp.406-407)

学校の連中は、学校を守ることが最優先事項で、そのためにはいろんな犯罪をあえて見逃しています。ドロドロ感が最高ですね。だから読んでいて疲れるのに読んでしまう。

登場人物は先生と生徒、あと用務員位です。それが最後に驚きの種明かしとなります。それは読んでいて全く気付かなかったです。何のことか書いたら流石に面白くないと思うので伏せておきます。

本の登場人物紹介に「?」と書いてあるのがジュリアン・ピンチベック。これが最初から最後までストレートリーと絡むわけですが、その頭脳戦も見ものです。

最後に、いいと思った一言。

正確に狙いをつけて石を投げれば、巨人でも倒せるものだ。
(p.162)

 

紳士たちの遊戯
ジョアン・ハリス 著
古賀弥生 翻訳
ハヤカワ・ミステリ文庫
ISBN: 978-4151775512