Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

浜村渚の計算ノート

今日は「浜村渚の計算ノート」です。ジャンルはラノベでしょうか。作者があとがきで次のように解説しています。

本当の意味での初心者向けであり、かつ数学への愛に満ち溢れており、できれば読んでいくうちに数学の知識が身につく(あるいは、そんな気になる)作品が読みたくて、この際自分で書いてニヤリと笑ってしまおうというきっかけで書いた
(p.278)

ということで、作者の思い通りの作品だというのですが、従って、このシリーズは数学が得意な人、例えば「青の数学」を読んで面白いと感じるような人だと、おそらく面白くも何ともないです。どこが数学なんだ、数字が出てくるだけじゃないの、みたいな話です。私はこういうノリの作品も好きなので手を出してしまうのですが、本格的な数学を期待した人だとかなり残念に思うかもしれません。

黒い三角定規という悪の集団も出てきますけど、やってることは子供だましのレベル。どんどん被害者が惨殺されていくマロリーのシリーズを読んだ後だと「なにこれ」みたいな。

1巻に出てくるネタは「四色問題」「0」「フィボナッチ数列」「円周率」なのですが、謎解きにフィボナッチの性質がどう使われているかというと、

フィボナッチ数列の14番目の数に、123を加えよ』……377+133で、510です
(p.191)

だから犯人はゴトウだ、というようなノリです。これだと八つ墓村の犯人が「やつは川村」みたいなものですが(違いますけど)、ダジャレというのは数学的には意表を突いた斬新な攻めかも。

4番目の話「πレーツ・オブ・サガミワン」には、円周率を10万桁暗記している上原という人が出てきます。何の役に立つんだという話なんですが、円周率はパスワードや暗唱番号に使えます。最近何かの漫画で、円周率の何ケタ目から何個、みたいな指示をするシーンがありました。

ただ、私がこういうのをパスワードに使うと、何ケタ目からにしたかを忘れてしまうんですよね。

 

浜村渚の計算ノート
青柳 碧人 著
講談社文庫
ISBN: 978-4062769815