Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

得手に帆あげて (1)

今日は本田宗一郎さんの『得手に帆あげて』を読破しました。この本はいろんな意味で面白いです。

いきなりこういう話がサラっと出てきます。

それまでの人生は、人並み以上に遊んだかわりに、三日や四日は寝ずに働いた。
(p.20)

サラッと三日や四日というのですが、こういうのは昔はどこでもあった話でしょう。ていうか本田さんよりかなり後の世代のはずの私だって、そういう経験があります。スティーブ・ジョブズさんも喜んで働けとか言ってたはずですが、そういう事を今の日本で言ったらパワハラだの何だのと言われて炎上しそうです。

ただ、ここで感じ取って欲しいのは、新しいモノを開発する現場には、効率とか健康とかを超えた所に何かがあるということです。

先日テレビで見たのですが、

床に落ちていたクロスねじをこっそり拾ってきた
(p.35)

日本にプラスねじを広めたのは本田さんらしいです。プラスねじを使うことで大量生産を効率的に実現できるようになるという仕組みです。その最初のねじは要するにパクってきたわけです。技を盗むという言葉もあります。そもそも人間が成長していく過程そのものが真似の積み重ねで、その上に創造力が生まれてくるのです。

ただ、本田さんは勉強を心底嫌いだったらしくて、そのあたりのズレというかギャップが、個人的にはすごく残念な気がします。確かに本田さんは、ろくに学校にも行かずに優れた製品を作り出しました。しかし、もし本気で学校に行ってたら、どれだけモノスゴイものができたかと思うと、やはりモッタイナイと思うのです。

学者っていうのは、幼稚園の園児みたいなもんだ。あたりまえのことを、どうして? どうしてって聞くんだ。
(p.39)

reason は「学」において最も重要なことです。そこが本田さんの感覚とはちょっとズレていたのかもしれません。

(つづく)

 

得手に帆あげて
本田 宗一郎 著
知的生きかた文庫
三笠書房
ISBN: 978-4837900658