Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

彼女たちはみな若くして死んだ

今日は先日チラっと紹介している本で「彼女たちはみな若くして死んだ」、原題は THEY ALL DIED YOUNG で、これは英語の題名の方がインパクトとか恐怖感があるような気がします。

事実は小説より奇なりといいますが、この本は実際にあった犯罪を集めたものです。しかし報道記事ではなく、ストーリー的に徐々に謎が解かれて行くような構成になっていて、リアルなミステリーといった感じでハマってしまいます。

2つ目の「ランベスの毒殺魔」に、こんな話が出てきます。

彼らはクリームがスティーブンソンが最近上梓した作品『ジキルとハイド』に触発されて、ジキルの分裂した自我が創りあげたハイドの模倣をしたのだとかまびすしく騒ぎたて、その本をはじめ、犯罪関連のたぐいの読み物はすべて出版禁止にすべきだと主張した
(p.73)

この事件は犯人が作品上映前から大量殺人を行っていたため、この仮説は否定されたのですが、何か事件があるとほにゃららが原因だとこじつける人が必ず現れますね。もちろん想像するのは自由ですが、実際に行動に移すのならその前に科学的な検証をして欲しいものです。

10編の作品は殆ど悲惨な殺人事件なのですが、異色なのが「彼女が生きているかぎり」。信託財産を管理している弁護士が、毎年小切手を送付する相手のヴェロニカが死んでいるのではないかと疑いを持ちます。面会を要求すると、ヴェロニカはカタレプシー(強硬症)で、会える状態ではないと拒絶されます。それでも強引に面会を強行するのですが、

ベッドに横たわっているのは、長い金髪の美しい女性だ。顔が赤い。高熱のせいなのか、異様に赤い。女性は目を閉じて、みじろぎもせずに横たわっている。
(p.250)

ということで本人確認ができてしまったので、弁護士は小切手を送ろうとしますが、探偵は面会した医師が電話帳に載っていないことを突き止め、やはりこれは詐欺であると確信するのです。一体どんなトリックかは伏せておきましょう。

あと、殆ど関係ないですが、ここはマークしてあったので。

このチェックは何週間もかかったが、それと平行して
(p.273)

並行ですかね。集中して読んでいるとこういう所が気になってしまいます。新しい冊では修正されているかもしれません。

 

彼女たちはみな、若くして死んだ
創元推理文庫
チャールズ・ボズウェル 著
山田 順子 翻訳
ISBN: 978-4488170028