Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

怪盗探偵山猫 黒羊の挽歌

今日も山猫で行きましょう。4冊目は「黒羊の挽歌」。今回も殺人事件。舞台はもちろん下北沢から始まります。

圧倒的に夢見る若者が多いのがこの街の特徴だ。
(p.6)

この前行ったときにキッチン南海の中をチラ見したときは、とても若者の街とは思えない雰囲気でしたけど。話を戻すと、ストーリーは例によって勝村が最初から最後まで踊らされます。

うららたちと別れたあと、勝村は代々木駅に足を運んだ――
(p.46)

うららというのは勝村の取材を受けた女子高生。代々木は山手線の新宿の次の駅で、私は明治神宮に行くときに代々木駅から歩きます。明治神宮は原宿から歩く人が多いのですけどね。このあたりも若干土地勘があります。

うららの話から黒崎みのりという名前が出てきます。この女子高生が黒崎組というヤクザの娘で、今回は結構暴れます。

ストーリーはその後、詐欺事件とか毎度おなじみの狂犬の犬井の元同僚とのバトルとか、どんどん錯綜していって訳が分からない謎の展開ですが、結局皆、山猫に踊らされて悪人が逮捕されて一件落着ということになるわけです。お約束感がハンパないですな。

実は山猫のマスターが、詐欺の片棒を担いだ男に対して痛烈なことを言います。

「お前は、そればっかだな。そうやって、何でもかんでも、他人のせいにして生きて来たのか?」
(p.224)

今回一番印象に残ったセリフです。コソ泥というのは自己責任なんですよね。ヘンな責任感もあったものです。

最後のクライマックスシーンの前に、山猫のアジトに犬井がやってきます。その場にマスターもいるのですが、犬井は山猫だと気付かないようですね。犬井は勝村を「山猫とつるんでいる」とみています。勝村は踊らされているだけで共犯している覚えはないので、もちろん否定します。

「あくまで、偶々(たまたま)だ――そう言いたいのか?」
「ええ」
(p.267)

そして最後、罠だと分かった上で敵のアジトに乗り込んだ犬村は、かつての同僚の牧野、今は悪党のボスとドタバタやっている間に、山猫が金を盗んで逃げてしまいます。空になった金庫を前に茫然とする牧野。牧野は、

「お前、山猫とグルだったのか?」
(p.306)

犬と猫は折り合えないと思いますが、もちろん否定する犬村に、じゃあなぜ金庫が破らているんだと問い詰めると、

「偶々だ」
(p.307)

どこかで聞いたような返事ですが、結局、皆、踊らされるのは上手なのです。

 

怪盗探偵山猫 黒羊の挽歌
角川文庫
神永 学 著
ISBN:9784041041215