今日は、この本を。
22日に紹介した「煙と骨の魔法少女」の続編になります。前作では、キメラのカルーが天使のアキヴァに、仲間は殺したと教えられたところで終わっていましたが、
二日前、カルーはアキヴァをモロッコに残して去っていった。アキヴァは別れ際にカルーから恐ろしい視線を注がれて、こんなことなら殺してくれたほうがいいと思った。
(p.21)
しかし、カルーの向かったところが危険だと思ったアキヴァは、カルーの行きそうなところを探し始めますが、行く所はことごとく虐殺された後のような状況で、生きている気配がありません。ただ、このストーリーは死んでも魂があれば生き返らせることができるというシナリオなので、本当に死んだのか疑惑がどうしても残ります。
蘇生師だったブリムストーンは死んだことになっています。今、蘇生する術を使えるキメラはカルーしかいないのです。そして、ほぼ絶滅したキメラ達の中で唯一生き残っていたのが最悪で、カルーの前身だったマドリガルを殺した白い狼、シアゴでした。しょうがないのでシアゴとカルーは共同してキメラを率いてゲリラ的に戦うことになります。
人間の世界と同じで、戦いはいつまでたっても終わりません。
おもしろいことに、大きな憎しみの中に小さな憎しみがわきでると、それがしだいに大きくなって、ついには大きな憎しみを乗っ取ってしまう。
(p.121)
いいところは何もないのです。しかし、キメラは蘇生して戦わないといけないし、天使はキメラを根絶しようと頑張ります。何でそんな戦いをしているのか皆忘れてしまっている、というのは Scarborough Fair でしたっけ。
アキヴァの仲間の天使、リラズはこんな問いかけをします。
「生きる価値があるのかってことよ、どんなことが起きても」
(p.230)
アキヴァはこれに「ある」と答えるのですが、事態はそう簡単には好転しないのです。
(つづく)
星影の娘と真紅の帝国(上)
レイニ テイラー 著
桑原 洋子 翻訳
ハヤカワ文庫FT
ISBN: 978-4150205652