Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

恋は雨上がりのように (2)~(10)

今日も「恋は雨上がりのように」ですが、ストーリーを紹介してもアレなので、印象に残ったセリフをいくつか紹介してみます。

まずは店長のセリフから。

国語は算数と違って
答えがないって
よく言われるけど、
それは問題が悪いんだよ。
正しい問題は、
ちゃんと論理的に
ひとつの答えを
導き出せるように
作られているからね。
(第21話)

ファミレスの控室であきらに国語の勉強を教えるシーンです。このマンガ、全般的に芥川龍之介の「羅生門」が引用されています。特に国語の補習では羅生門がズバリ題材になっていて、このシーンも羅生門に関する問題が話題になっています。

普段、読書をしない
橘さんが図書館へ
来たっていうことは、

どこかで橘さんを
呼んでいる本が
あるのかもしれない

それはきっと
今の橘さんに
必要な本だよ
(第22話)

図書館で偶然出会ったあきらに対するセリフです。あきらは店長の好きな本を知りたくてどの本がいいか訊ねたのですが、店長はそれに気付かずに自分で選ぶのがいい的なことを言ってしまいます。ちなみに私が図書館で本を借りるときは、割と適当に手に当たったのを選んでいます。

子供は経験が
少ない分、
インプットできる
スペースがたくさん
あるんだよ。
大人になると
データも増えて、

インプットも
アウトプットも
ひと苦労。
(第59話)

大人になると記憶力が低下するといいますが、最近の研究ではあまり低下しないという説の方が有力のようですね。

次は、橘あきらのセリフから。

本当に好きな人がいるのに
あきらめて別の人のところへ
行くなんて…

あたしは
考えられない。

それに、それって
相手にも悪いと思うし…
(第34話)

学園祭のときに、バイト仲間のユイちゃんがアキラに他の人はどうかということを暗に仄めかした後、このセリフになります。猪突猛進タイプであるのがよく分かるセリフです。相手にも悪いというところに性格が出ています。

セリフじゃないですが、第28話では、あきらが迎え火をまたぐシーンが出てきます。私の地域ではこのように火をまたぐ風習はなかったのですが、妙に懐かしい感じがしました。もう一つ。

店長はいつも、
雨の日の私を
助けてくれるんですね。
(第41話)

タイトルからしてそうなのですが、あきらの困った時は大抵雨の日が絡んできます。

次は、あきらの親友、喜屋武はるか。

結婚、
されてるん
ですか?
(第47話)

はるかが靴を買いに行ったときに、たまたま店長と出くわすシーンです。はるかは店長を一度遠くから見ただけなので、顔以外は殆ど何も知りません。で、こういう質問になります。知らない女子高生にいきなりこんな質問をされたら驚くのは必定、このシーンは面白かったです。

次は、あきら、はるかと同じ高校で、他校の女子高生からも人気の山本先輩。

「まあでも、
才能のあるヤツは
そう簡単なハナシでも
ないんだろうな。

単純にケガの再発の
恐怖もあるだろうけど…」
「けど?」
「まわりの期待値も
高いだろ。
それに何より、
本人の理想もさ。」
(第55話)

はるかと山本先輩の、図書室での会話です。才能のあるヤツというのは、あきらのことです。山本先輩は、あきらのことは知らないのですが、走りたいはずだと断言します。その理由がこのセリフです。

次は、ファミレスのバイト仲間の加瀬さん。

光を見つけたって
誰しもが そこへ
向かっていけるとは
限らないよな
(第36話)

植物園で偶然一緒になったときの言葉です。加瀬さんは義理の姉に好意を持っていますが、それは口に出せません。マンガではあきらに対して秘密をバラさないかわりにデータを要求するなど、いやなキャラの立ち位置なのですが、加瀬さんは自分なりに複雑な問題を抱えているわけです。ある意味、一番悲劇的なキャラかもしれません。ていうか、このマンガ、恋愛という意味では誰もうまく行かないんですよね。

次は店長の同級生、小説家の九条ちひろ

なっ、なんだよ
まあまあって!
超絶面白いだろ!!
(第31話)

居酒屋で店長が、ちひろの本に対して「まあまあだ」と言ったのでちひろが怒ります。「超絶面白い」という俗な表現が面白いです。超絶という表現は私もよく使いますが、私の場合はゲーム由来なんですけど。一般的にはどうなんでしょうか。

今の流行がわからんって
ことは自分が古くなってる
ってことだろっっ!!
(第49話)

これは新人作家、“町田すい”の小説のどこが面白いのか分からない、と悩んでいるセリフ。店長はどうでもいいんじゃないか、的なスタンスですが、ちひろはとことん徹底的に拘るタイプのようです。

大体 文学ってのは
人を救うための
モンじゃ
ねーんだよ!

文学ってのは
毒なんだ…
(第54話)

これは結構核心を突いていると思いますね。

さて、その新人作家、17歳の町田すいくんのセリフ。いろいろやりたいことがあると言ったところ、ちひろは本気でやれと批判するのですが、

ちがいますよ!
俺 全部本気です!

本気で言ってるし、
本気でやりたいんです!
(第70話)

これに対してちひろは、

俺 昔から小説以外
やりてーことないけど、
それでも時間は
足りねぇよ

といいます。これはこれで分るような気がします。日暮れて道遠し。


恋は雨上がりのように
ビッグコミックス
眉月 じゅん 著