Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

剣姫―グレイスリング

ファンタジーです。ファンタジーといえば魔法が定番ですが、この話では能力のことを「賜」(たまもの)と呼んでいます。

主人公はカーツァという少女。それでタイトルが剣姫です。持っている賜は、戦闘能力です。特にスピードは無敵で、009、あるいはアクセラレーターみたいな感じです。

物語には7つの王国が出てきます。

この大地には七王国が並び立っている。そして七王国それぞれに、何をしでかすかわからない王がいる。
(p.26)

カーツァは大地のちょうど真ん中にあるミッドランズという国の王様、ランダ国王の姪、という立ち位置になっています。もう一人の主役がポオ。リーニッド王国の末っ子の王子です。このカーツァとポオが冒険するというお話です。

賜持ちは目の色が左右違うという設定になっていますが、

「ほら、片目が青で、片目が緑のあの子よ」
(p.18)

これはアニメでよくある設定ですね。悪役はレック王。人誑しの賜を使います。どういうスキルかというと、

口から口へとその噂を伝え広め、信じやすい人たちの耳に吹きこむ。途方もない嘘、薄弱な根拠や真相、そんなものがはるばるリーニッドまで伝わってくるんだよ。
(p.256)

フェイクニュースが本当になってしまう。相手に嘘を本当だと信じ込ませるという能力です。これはコワイですね。

ところで、カーツァは自分の能力を「殺しの賜」と思っているのですが、ポオはそうじゃないと言います。

「じゃあ、なんだって言うの?」
「さてね。それはわからない。でも、殺しの賜は君が思っているのと同じわけないよ。疲れ知らずだとか、寒さひもじさに平気って点とかさ」
「疲れるわよ」
「ほかにもあるよ、土砂降りの中でも巧みに火を起こせるとか」
「ほかの人より気が長いだけよ」
(p.291)

魔法というよりも、何かアウトドアのプロっぽいですね。ヒロシです

さてこの二人、レック王を倒すのに失敗して、モンシー国の王女ビターブルーを連れて逃亡することになるのですが、ポオは負傷して逃げ切れないので途中で隠れてやり過ごし、カーツァとビターブルーの二人だけで冬山を越えるシーンが大変です。「闇の左手」にしろ「ウロボロス」にしろ、何でわざわざ吹雪の中を歩き回るのでしょうね。読んでいるだけで寒くなってきます。


剣姫―グレイスリング
クリスティン・カショア 著
立花オコジョ イラスト
Christin Kashore その他
和爾 桃子 翻訳
ハヤカワ文庫 FT
ISBN: 978-4150205331