Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

バカの壁 (2)

今日も引き続きバカの壁から。英語論文の話はちょっと笑ってしまいました。

学問の世界でも、やたらに個性個性と言うわりには、論文を書く場合には、必ず英語で書け、と言われる。
(p.45)

大学あるあるなのですが、これはどういう仕組みかというと、

英語で論文を書く→英語圏の大学が引用してくれる→世界ランキングの評価が上がる→文部省からの予算が増える→ウマー…

というパターンがあるのだそうです。何で世界ランキングの評価が上がったら予算が増えるのか、そこが個人的には謎なんですけど、これは私がやはりバカなんでしょうか。

次に紹介したいのが、君子豹変の話。この言葉は変われることが偉い、というのが本来の意味だそうですが、

いつの間にか、変わるものと変わらないものとの逆転が起こっていて、それに気づいている人が非常に少ない、という状況になっている。
(p.58)

確かにそう言われてみたら私もあまり良くない意味に使っているような気がします。おそらく「人間は変わらないのがいい」のような先入観があって、その前提で勘違いしたんじゃないかという話になっていますが、人間は変わるし個性も変わる、それが本来の姿なのに、ということが言いたいようです。

知るということは、自分がガラッと変わることです。
(p.60)

映画「卒業」の主人公のベンが I wanna to be different といったのは、もっといろんなことを知りたいという意味だったのかもしれません。

この後、言葉とは何か的な哲学風の話題が出てきますが、個人的には実に興味深かったです。ただ、内容としてはよくある一般的な解釈で、特に珍しいものではありません。といいつつ、これはどうなのか。

では、どこに正しいリンゴという字があるか。そんなものは存在しません。
(p.71)

人間の判断はパターン認識が基本で、似ているものは同じとみなしてしまいます。正しいか正しくないかではなく、似ているか似てないかなのです。では、正しいモノが存在しないのかというと、それは「正しい」の認識に依存します。あるといえばある、ないといえばない。完全一致しないと正しいといわないのか、パターンが一致すればそれで正しいとするのか、その差だと解釈すれば、全て正しいリンゴという字なのだということも可能でしょう。

外の世界のリンゴは、それぞれ特定のリンゴ以外にあり得ない。ところが、頭の中のリンゴは、プラトンの言うイデアとしてのリンゴです。
(p.75)

リンゴの理想体を想定して、それと現実のリンゴを比較させてマッチング判定、というのはプログラミング的にも納得できるロジックです。その理想体というのが機械学習で得られた謎のデーターだったらさらに面白そうですね。

(つづく)


バカの壁
養老 孟司 著
新潮新書
ISBN: 978-4106100031