Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

なぜ、「白雪姫」は毒リンゴを食べたのか

これは有名な童話の解説ではなく、幸せ恐怖症という病気について書かれた本だ。そして、白雪姫が毒リンゴを食べた理由は、幸せ恐怖症だったから、という結論になっている。あえて幸せから逃れるために不幸を選択したというのである。また、それと同じように自主的に不幸を選択する女性がいると指摘する。

読んでみて、なるほどと思える箇所がたくさんある。例えば、

こういう人は、私の本を読んで、そこに真実が書いてあると認めたからこそ、意識では逆に否定に走るのです。真実を認めたら辛くて生きていけなくなるからです。
(p.27)

これはまさにそんな気がしてくる。人間は本当のことを言われたら怒るという。

白雪姫の矛盾を指摘するところは面白い。

白雪姫は小人さんから「誰も中に入れてはいけない」と言われているのに、変装した母親をやすやと中に入れてしまいます。
(p.31)
そんな山奥に物売りが行って、採算が取れるのでしょうか。
(p.31)

そんな感じのジャブがいくつも続いて、

七人の小人さんたちは、とっても親切な人として描かれているのに、なぜ白雪姫を下女扱いするのでしょうか。
(p.32)

知らんがな。フェイクじゃないのか。

で、なぜドアを開けたかというと、この本では、

自分の幸せを破壊してもらおう
(p.44)

と考えたから、ということになっている。ドアを開けたのも、声で実母が変装しているのが分かったから、というのだ。なるほど。チコちゃんは知っているのかな。

途中の説明に出てくる「第一希望」という考え方が面白い。その希望を実行したときに得られるエネルギーが最も大きいものを第一希望、次が第二希望、そしてその次を第三希望のように想定した上で、達成時に得られるエネルギーは、第一希望が100で、第二希望が10、第三希望は1、のように設定されていて、何かを実行するときに必要なエネルギーは10と想定している。

第一希望を選択して実行すると、10のエネルギーで100のエネルギーが得られるからウハウハで、どんどんやりたくなっていく。逆に、第三希望を選択すると、見返りが少ないので、

やればやるほどやる気が無くなります。
(p.85)

そして、幸せ恐怖症の人は、第三希望をやりたがるというのである。

いろんな幸せ破壊のパターンや、実例が出てくるのは面白いのだが、リアルにそういう人が多い世の中というのはどうなの、というモヤモヤ感がちょっと残る。


なぜ、「白雪姫」は毒リンゴを食べたのか
岩月 謙司 著
新潮社
ISBN: 978-4104593019