Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

東大医学部生が教える 本当に頭がいい人の勉強法

タイトルを見ると、頭のいい人向けの勉強法で、そうでない人にはできません…みたいな想像をするかもしれないが、ま、そういわれてみればそうかも、という感じはしないでもない。

著者の葛西さんは東大理三に現役合格。数学が超絶得意系の人なので、大半が数学の話になっている。ときどきパズル的な数学の問題が出ているが、勉強法とか殆ど出てこない。どうやって数学が得意になったかというと、ルーツはそろばんにあった。

小学3年生くらいで4ケタ×4ケタの暗算ができるようになり、4年になるとそろばんのプリントの5ケタもそろばんを使わず暗算でやったほうが速くなり、10歳のときに暗算十段を取得しました。
(p.183)

そろばんが得意だと計算が得意になる。算数が得意になる。そこから数学が得意になる。論理的思考が得意になれば、他の科目も引き上げてくれる、という仕組みのようだ。しかし、この勉強法は、まず小学生のときにそろばん、暗算を得意にしておかないと真似できない。受験生になってからあわてても全く間に合わない。

そこは妥協するとして、数学を勉強するコツも紹介してくれているのだが、

それは自分でどんどん解くことだと思います。
それと自分で手順を探せるまで考え抜く訓練だと思います。
(p.017)

何かありきたりすぎて、これで参考にするのは難しいような気もする。ちょっと面白いのは、後半の「考え抜く」というところ。これは昨今流行している解法暗記とは逆を行っている。

解法暗記は考えても分からないときにあまり悩まないで、参考書に出ている解法を暗記して、それを当てはめて問題を解くというやり方。葛西さんは、考え抜く訓練をしろという。このあたりが頭がいい人向けなのかもしれない。

東大二次の数学がクリアできる条件としても、

 普段から頭を使う習慣のあった人
(p.089)

だろうという。もっとも、これも普通に言われていることで、東大を狙うのなら自分の頭で考えろ、という格言みたいな言葉もある。

では、東大を受験する人はどんな勉強をすべきか。

自分に合っている参考書を選んで地道に進めて、問題集を解き進めて、過去問をやって、志望者がたくさん受ける模試を受けることです。
(p.046)

それだけ?

と突っ込みたくなるような常識的なことしか指摘してくれない。よく考えてみると、ここに書かれている「地道に進めて」や「問題集を解き進めて」の中身がとても難しいことも分かるのだが、詳細は自分で考えろということか。これは後に少しヒントになりそうなことも書いてあって、

参考書や問題集を買ったら、まず全部で何ページあるか見て、終わらせたい時期を決めます。
次に、その日までの日数でページ数を割って、1日あたりのページ数を決めます。

(p.113)

Yahoo!知恵袋の受験カテゴリを見ていると、こんなことが絶対に出来ていない人が大勢いると確信できる。〇〇を今からやって間に合いますか、という質問が FAQ なのだ。1日あたりの作業を決めるなんて、できる人なら中学受験の小学生でも一人でできるもん、程度のことなのだが、できない人は高3になってもできないのだ。まあできないものは仕方ないのだが。

ともかく、葛西さんは東大進学がデフォルトのような進学校ではなく都立高校に進学した。だから、授業の進度には困ったようだ。

学校の進度は想像以上に遅く、物理Iや化学Iも2年からだったので、現役で確実に東大に入るためには、勉強は自分で進める必要がありました。
(p.068)

やはり先行学習をしたようである。これも数学が得意だと、そこに時間を取られずに済んだのは幸運だったのだろう。

数学というのはやはりキー科目のようで、最近、とある掲示板で、東大は数学0点でも合格できるのか、という話題が出ていた。実際にそんな人がいたという話を私は聞いたことがないが、

自分が受けた2013年に6問ある数学のうち、1問も解けずに合格した人がいました。次の年にもいたようです。
(p.091)

6問ということは、文系ではなく理系の話である(文系は4問)。東大数学は奇問を出さないので有名だというのに、数学が1問も解けないレベルの人を東大に入れていいのか、という疑問がないわけでもないが、1問も解けないというのは0点という意味ではなく、部分点はあったと考えるべきだろう。全問手を出して3割でもあれば36点は入るから、約2問解けたのと同じことになる。

数学以外では、英作文でこういうの書いた、というのが面白かった。

姉「見て! きれいなお花」
弟「僕、お花なんか興味ない」
姉「そんな、駄目よ。人間は自然なしでは生きられないのよ」
(p.134)

興味ないものを無理に押し付けてはダメな気もするけど、…とかいうのは突っ込むベクトルが間違っているのかな。


東大医学部生が教える 本当に頭がいい人の勉強法
葛西 祐美 著
二見書房
ISBN: 978-4576171326