Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

浮雲

国語の教科書にはまず間違いなく名前が出てくるレジェンドの小説だが、実際に読んだ人はどれ位いるのかよく分からない。

現代化してアニメにすればそれなりにファンも付くような気がするが。主人公は内海文三。性格は行動に移せない系。しかもリストラされてしまって無職。従姉妹のお勢に気があるのだが、それも全然伝わらない。横からチャラい本田昇がちょっかいを出す。怒った文三は本田に絶交を宣言する。

「本田。」
昇は飲みかけた「コップ」を下に置いて
「何でゲス。」
(p.144)

もう戦う前から敗けているような気がするが、文三は昇の助けを借りればリストラされた役所に復職できるかもしれないというのでイライラしている。

解説には次のようにまとめられている。

文三は他には能はないにしろとにかく高潔な青年であるこの点で僕は卑賤な昇に数等優る人物であることには間違いない。だが実社会の生活ではなぜ文三は昇に敗れるのか。人間は社会に立つには卑賤でなければならぬのか。二葉亭が『浮雲』に提出した根本の疑問は以上のようなものであった。
(pp.226-227)

サクッと読んでみるとそんなに仰々しい話のようには見えないものだが、まあ時代というものもあろうし(この解説が書かれたのは昭和16年3月)、当時としては画期的な作品だったろう。ただ、文体がアレなので、今時のラノベに慣れている人にはちょっと苦しいかもしれない。


浮雲
二葉亭四迷
岩波文庫
ISBN: 978-4003100714