Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

雑記

今日は「戦中派不戦日記」を少し読み始めましたが、これはまた重いですね。読破にかなりかかりそうです。

昨日紹介した「恋は雨上がりのように 10」の話を少し。このマンガには芥川龍之介の「羅生門」が出てきます。10巻は再掲なのですが、確か国語の補習の問題だったと思います。

あなたは下人のとった行動をどう思いますか? 自由に書きなさい。

この設問に対して、

下人の勇気が、
今後彼の人生にプラスに働けば
いいなぁと思います。
(10巻、p.151)

店長はこれを「いい答えだ」と言ったあとで、俺には文学を捨てる勇気がなかったと言うのですが、あきらは「捨てなかった勇気じゃないんですか?」と問い返します。このツッコミも面白い。

羅生門は読んだ人も多いと思いますが、テーマをざっくり独断的に紹介すると、人間が極限状態、例えば盗人になり人殺しをしないと生きていけないような状態になったときに、それでも生きるのか、生きていいのかという物語です。

どうにもならない事を、どうにかするためには、手段を選んでいる遑はない。
(羅生門青空文庫より)

この状態になってなお、手段を選ばず行動できるのか。そこで「勇気」という言葉が出てきます。

「捨てなかった勇気」というのは変な方向から見ています。普通なら「(持ち)続ける勇気」という方向から見ようとするでしょう。店長は小説家になるという夢を捨てられなくて、今も小説を書いていますが、あきらから見れば小説家に固執せずファミリーレストランの店長という人生を選んだ時点で既に「小説」という夢は捨てたことになるから「捨てない勇気」ではなく「捨てなかった勇気」なのでしょう。

あきらのような1か0しかない生き方だと、小説を捨てなかったら店長にはなっていないはずなので、店長になりつつ小説も書くという優柔不断な選択肢はあり得ないのです。