Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

黒十字秘文

今日はサラっと読んでしまったのを紹介したい。時代小説。ていうかミステリー。心中に見せかけた殺人事件が発生する。黒十字というのは十字架なのだが、裏にはキリシタンが?

舞台は江戸。ヒーロー役は柊左近という、実にそれっぽい名前の侍だ。時代小説によく出てくるヒーローのお約束通り、なぜか長屋に住んでいる浪人で、刀を持たせると滅法強い。どんな敵でもバッサバッサと斬りまくる、という程のバトルシーンもないのだが、左近は小悪人を相手にうまくあしらって操るのが実にウマい。

やがて連れていかれたのは、蔵前の裏通りにある小さな居酒屋であった。うすよごれた提燈が軒先へかかっていた。店の中も暗かった。
(p.122)

これは、左近が小悪党の唐三を脅して店に連れ込むシーン。小悪人の唐三は左近の圧倒的な強さが分かるので逆らわない。話をしていると案外話も通じてくる。こういう店の雰囲気が何ともいえずいい感じなのだ。この唐三が最後はいい人になってしまうのも面白い。犯人はかなり意表をついていて、名探偵ポワロに出てきて欲しいようなオチである。


黒十字秘文
春陽文庫
江崎 俊平 著
ISBN: 978-4394125310