Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

終物語 (下)

中巻に突っ込んでしまったのだから、当然下の方にも手を出さなければなるまい。今月中に終わらせたいし、ということで終物語(下)だけど、ストーリー的にはいまいち盛り上がらない感じなのでざっくりパスして名言的なのをいくつか評して終わらせたい。

とはいっても全くストーリーに触れないのもアレだからちょろっと書いてみると、この巻は八九寺を脱獄【謎】させる話の「まよいヘル」と、阿良々木と戦場ヶ原がデートする話の「ひたぎランデブー」と、忍野扇を殲滅する話の「おうぎダーク」、この3部作の構成になっている。で、盛り上がりに欠けるのは多分、完全復活した吸血鬼が大暴れしていないからのような気がする。地球を滅亡させるだけのパワーを持っているのに、何かおとなしいのだ。そんなにドーナツが食いたいのか。

で、八九寺と阿良々木が地獄でてくてく歩いているときのセリフから。

思い通りに生きている人って、実際のところ、世の中にはどれくらいいらっしゃるんでしょうね?
(p.64)

八九寺の言葉。物語シリーズのキャラは殆どが重い通りに生きている感じだが(戦場ヶ原だけは軽いが)、実際この世の中に思い通りに生きている人が少ないのだとしても、世の中の8割の人間は“何も思わずに”生きているような気がするのだが。ちなみに、皆さんは何か思いながら生きてますか? 私の今の最大の関心事は、今日のおかずを何にするかなのだが、多分思い通りにはならないと思う。

八九寺って小学生の設定のはずなのだが、言うことはやけに大人っぽい、というか不慮の事故で死んだ割には厭世的で悟っている感じもする。

『もしも人生をやり直せるとしたなら』なんて仮定は、してみると実は、同じことを延々繰り返すだけということなのかもしれませんね。
(p.68)

これを言ってる八九寺は迷いのプロだから、堂々巡りというのはありそうだ。ちなみに堂々巡りって清水寺の話が元ねたらしい。

次に感動的なのは、戦場ヶ原のこのセリフ。

「今日まであんなに頑張ったんだから、たとえ結果に繋がらなかったとしても、恥じることはないわ。あなたは既にやり遂げたのよ」
(p.144)

勉強したのに不合格になるという想定らしいが、ま、何にしても努力するのはいいことだよね。結果が出なくても失敗体験は重要なんだ。しかしそれが努力の成果というのは悲しいかも。

次は斧乃木の言葉。

人が怒っているときっていうのが、一番楽しいよね。
(p.154)

ベクトルがあっち向いていればそれでもいいが、こっち向いていると楽しいどころじゃないぞ。

マグカップは、コーヒーを入れられたときと紅茶を入れられたとき、どっちの方が嬉しいか
(p.158)

ん、これも斧乃木ちゃんの言葉だよな。確認してしまったじゃないか。合ってた。マジレスすればマグカップには感情がないだろみたいな話なのかもしれないが、個人的には紅茶が嬉しいと思う。ティーカップを出し抜いた感があるので。

「来年のための準備は、一日でも早く始めたほうがいいと思うよ」
(p.161)

斧乃木ちゃんも阿良々木大学入試不合格説が前提なんだよね。

儂は、ご主人様に従うまでじゃ。
(p.280)

これは忍ちゃん転じて完全復活した忍さんの言葉。胸が凄いことになっているはずだが、その描写がない。それはそうとして、あれやこれやで主従関係は消滅していそうなものだが、むしろ強固になっている。ご主人様に従うのならメイド服でも着せてみてはどうか。

我があるじ様がうぬに協力するというのならそうするまでじゃし――我があるじさまがうぬと対立するというのならそうするまでじゃ
(p.280)

私があるじ様だったら、私に従うなとでも言ってみたくなるが。これを言ったら世界が破滅するのだっけ。好きにせいや、程度でやめておいた方が無難か。

ネタバレで書いてしまうとこの話、最後はまた忍は幼女に戻ってしまうが、その流れは「神様はじめました」の巴衛が何度も(2回だけか?)神使になるというのを思い出した。ていうか「神様はじめました」って最後まで読んでないような気がするな。このブログでも紹介してないし。


終物語 (下)
西尾 維新 著
VOFAN イラスト
講談社BOX
ISBN: 978-4062838689